「言おうとしたけど、言ったら何か起きそうやなと」堂安律はなぜ同僚への言葉を飲み込んだのか。貴重な勝利の舞台裏「自分の中で抑えました」【現地発コラム】

2023年12月13日 中野吉之伴

「選手全員残っていたと思います」

マインツ戦の後に取材に応じた堂安。(C)Getty Images

 タイムアップのホイッスルが鳴るまで、ドキドキが止まらない試合がある。ブンデスリーガ第13節、堂安律が所属するフライブルクが敵地で1-0とマインツを破った一戦はそんな試合だった。

 序盤からホームのマインツが非常に精力的な動きで、惜しいチャンスを作り出していたということもあるし、何より昨シーズンここで起きた土壇場の歓喜/悲鳴が両チームのファンの脳裏にもくっきりと残っているからだ。

 2022-23シーズンのマインツとのアウェー戦で、フライブルクは55分に日本代表MF堂安律が相手守備のずれをうまく突いて先制ゴールをマーク。その後もうまく試合をコントロールしながら進めていた。2点目は入らなかったが、相手の攻撃に丁寧に対処できていたので、このまま試合は終了するのではないかと思われていた。

 だが、サッカーは最後まで何が起こるかわからない。アディショナルタイム6分、ロングスローがペナルティエリア内に放り込まれると、長身FWルドビッチ・アジョワクが粘り強くオーストリア代表FWカリム・オニシボへつなぐ。冷静にゴール隅へと流し込まれ、土壇場で同点に追いつかれたのだ。

 勝ち試合だっただけに、一瞬の気のゆるみを突かれた引き分けにされたフライブルクからすれば、何とも後味の悪い試合として記憶に残っている。

【動画】巧みな裏抜けから冷静なフィニッシュ!堂安律のEL初ゴール
 今回の対戦でもスタジアムでは似たような雰囲気が漂っていた。70分にスローインからの攻撃で最後はオーストリア代表ミヒャエル・グレゴリチュが先制ゴールを奪ったフライブルク。しかし、終盤にマインツの猛攻を仕掛け、あわやの失点のシーンが続く。

 こうした時に選手の脳裏には"あの時"のことがよぎってしまうのだろうか。試合後のミックスゾーンで堂安に尋ねてみた。

「選手全員残っていたと思います。自分はあの時点でベンチ(に下がっていて)で、そういう考えは(試合の)最後の方は少しありました。チームメイトに言おうとしたけど、言ったら何か起きそうやなと思ったんで、自分の中で抑えました(苦笑)」

 言葉を飲み込んでベンチから戦況を見守っていた堂安は、試合終了間際に味方選手がゴール前で身体を張ってマインツ最後のシュートを防いだシーンに安堵の思いを抱いたことだろう。

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