現地メディアも驚いた「香川ベンチ外」の理由は指揮官の“秘策”にあり

2016年03月06日 山口裕平

MF2枚に求められたのは、相手のケアとスペースを消すこと。

今後も厳しい日程での戦いが続くドルトムント。間違いなく香川の出番は訪れるはずだが、そこでどれだけ高い貢献度を示せるかが重要だ。 (C) Getty Images

 勝点差5で迎えたバイエルンとの首位決戦。香川は先発どころか、ベンチからも外れることになった。
 
 この判断は現地のメディアにとっても驚きだったようで、メンバーが発表された際には、プレスルームで多くの記者が香川のベンチ外について触れていた。
 
 それも無理はないだろう。多くの主力が温存となったミッドウィークの前節ダルムシュタット戦で、香川は出場しなかったからだ。
 
 ヨーロッパリーグ(EL)・ラウンド32のポルト戦など重要な試合で先発してきた香川を出場させなかったのは、バイエルン戦に向けた「温存」と考えるに十分な判断材料が揃っていたし、実際に現地紙『ビルト』や『キッカー』は香川の先発を予想していた。
 
 戦術上の理由か? あるいは健康上の問題でもあったのだろうか? 試合後の会見で、香川がベンチ外となった理由を訊ねられたトゥヘル監督は、こう答えた。
 
「(香川のベンチ外は)戦術上の理由からだ。今日は後ろ(DF)を5枚並べる戦術だったので、非常に心が痛んだけれども、10番タイプ(トップ下)の選手を外すしかなかった。シンジは健康だ。病気でも怪我でもない」
 
 この試合でトゥヘル監督は、バイエルン対策を講じてきた。フォーメーションはいつもの4バックではなく5-2-3。バイエルンの強みであるウイングを封じるためにウイングバックを配置し、その前に2枚のMFを並べて、攻撃はスピードのある3人の速攻に託した。
 
 8節で対戦した際、ドルトムントはポゼッションでバイエルンに対抗しようとしたが、相手のクオリティを上回ることはできずに1-5の大敗。香川も、あまりプレーに絡むことができないまま交代となった。
 
 同じ轍を踏まないためにも、トゥヘル監督は前回とは違う戦い方を選択した。守備に人数を割いて重心を下げ、奪ってからの速い攻撃でゴールを狙うものだ。この戦い方には、10番タイプの選手は必要なかった。
 
 中盤の2枚に求められたのは、後方から試合を組み立てるビダルとシャビ・アロンソをケアしつつ、流動的なポジションチェンジで立ち替わり入れ替わり相手選手が入ってくるバイタルエリア前のスペースを封鎖するというハードな守備タスクである。
 
 前からボールを追い回すならまだしも、この守備的な役割を担うのに、香川は適役とは言えなかっただろう。
 
 この重要な試合でメンバーから外れたショックは、決して小さくはないだろう。しかし、落ち込んでいる暇はない。それは本人が一番分かっているはずで、試合後には気持ちを切り替えてスポンサーイベントにも出席した。
 
 ミッドウィークにはELラウンド16のトッテナム戦を迎え、週末には好調マインツとの試合を控えている。再びドルトムントが自ら主導権を握るサッカーを展開するのであれば、そこで再び香川の力が必要とされるのは間違いない。
 
現地取材・文:山口 裕平
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