連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】鹿島が示す「当たり前」を徹底することの大切さ

2016年03月06日 熊崎敬

出来は70点でも、それでも最後に勝つ。

それぞれきっちり仕事を果たした小笠原と植田(奥)。鹿島がらしさを発揮して開幕2連勝を飾った。 (C) SOCCER DIGEST

 敵地でのG大阪戦に続く「イチゼロ」。鳥栖を退け、鹿島が開幕2連勝を飾った。
 
 遠藤、山本、金崎ときれいにつないだFKからのゴールを除けば、決定機はわずか。終盤は突き放すどころか自陣に押し込まれたが、それでも勝点3を手にした。
 
 試合巧者の鹿島は自分たちの強みを出すよりも、まず敵の強みを封じ込むことで主導権を握ろうとする。
 
 CB植田が激しい空中戦でFW豊田を圧倒し、中盤の底では小笠原がトップ下の鎌田を容赦なく潰しにかかる。
 
 鹿島の試合を見ていると、「今日はこのふたりを潰して勝つぞ」という明確な意図が伝わってくる。勝負のポイントがチーム内で共有され、しっかりと実践できていることがわかる。
 
 立ち上がりは鳥栖が押し気味だったが、局地戦を制することで鹿島はリズムを次第につかみ、その流れの中で金崎のゴールが生まれた。
 
 鳥栖としては気がついたら敵の土俵に引きずり込まれていた、という心境かもしれない。
 
 ちなみにJリーグでは、ハーフタイムに両監督のコメントが記者席に配られる。そこに書かれていた石井監督の言葉もまた、非常にらしいものだった。
 
 指示は3点。
●自分たちがやらなくてはいけないことを再度徹底しよう。
●自陣内では簡単にFK、CKを与えないこと。不用意なファウルは禁物だ。
●セカンドボールへのアプローチの競り方をしっかり。必ず相手よりも速く反応すること。
 
 どれも「当たり前じゃないか」ということばかりだが、この簡潔で具体的な文面に、基本を大切にする鹿島の姿勢が見て取れる。
 
 特に3つ目の指示は、石井監督就任後に植えつけた断続的なハイプレスの肝であり、こぼれ球へのアプローチはかなり徹底されていた。
 
 ボールへの反応の速さはもちろん、激しく腰から当たりにいくことでボールを死守し、敵に逆襲のチャンスを与えない。いわゆる、球際の強さである。
 
 出来は70点でも、それでも最後に勝つ。細部を疎かにしない鹿島の姿勢は、大いに見習うべきものがある。
 
取材・文:熊崎敬
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事