EURO2024で旋風を巻き起こすか⁉ オーストリア代表とラングニックの相思相愛【現地発】

2023年12月09日 中野吉之伴

「自分たちは勇敢なプレーをしよう」

22年夏からオーストリアを率いる智将ラングニック。(C)Getty Images

 ドイツとのホームゲームで2-0の快勝を収めると、オーストリアのエルンスト・ハッペルスタジアムはお祭り騒ぎとなった。挨拶を終えた代表チームがロッカールームへと姿を消しても、ファンは旗を何度も力強く振り、ヒットソングを、サッカーソングを歌い続けた。

 記者会見場には高揚感があった。テレビインタビューをこなし、ロッカールームで選手と話した後なので、オーストリア代表監督ラルフ・ラングニックが会見場に姿を現わしたのは深夜12時を回っていた。だが、疲弊した様子は全くない。地元記者が気持ちの高ぶりを抑えられずに早口で質問をしても、ラングニックは落ち着いた様子で丁寧に答えていた。

「順当な勝利だと思う。無失点というのが素晴らしいし、あらゆる時間帯でゲームをコントロールできた。試合前に『自分たちは勇敢なプレーをしよう』という話をしていた。それをうまくピッチで見せてくれたうえ、素晴らしいゴールも決めてくれた。チームには素晴らしいエネルギーが備わっている。はっきりとしたアイデアのもと、みんながプレーできている。今日のようなゲームをしたら、どんな相手と戦ってもチャンスがある」

 言葉の一つひとつに力がこもる。その言葉はすぐ消えていく類のものではなく、確かな説得力を持つメッセージとして伝わってきた。ドイツ人指揮官が続ける。

「選手はあらゆるポジション(エリア)でフルパワーを出してくれたと思う。試合後の雰囲気も特別だった。代表活動をここまで楽しみにしている選手が揃ったチームは、他にそうないのではなかろうか。今日のゲームは就任9か月の中でベストだ。昨年(11月)のイタリア戦もよかったね。あの時も2-0で勝利した」

【動画】見事な2ゴール!ドイツ戦のハイライト
 それにしても感じずにいられなかったのは温度差だ。直前に行なわれたドイツ代表監督、ユリアン・ナーゲルスマンのそれに熱はなかった。

 やることなすことうまくいかないドイツと着実にレベルアップしているオーストリア。どちらも自身のサッカーに明確なイメージを持つ監督なのだが、ラングニックとナーゲルスマンには大きな違いがある。

 それはナーゲルスマンが自身のサッカーを体現するために必要な人材とその起用法を探り、試し、築き上げなければならないのに対し、ラングニックは探ったり試したりする必要がほとんどないところからスタートを切れたという点だ。

 なぜか。

 それはオーストリアサッカー界から自身のイメージするサッカーを体現できる選手が生まれてくるための礎を作ったのが、他ならぬラングニックだからだ。

 レッドブル・ザルツブルクの監督として、そしてスポーツディレクターとして、欧州を席巻するダイナミックなプレッシングサッカーを何年もかけて構築。トレーニング理論も落とし込んだ。
 

次ページ前監督は守備的で消極的なサッカーを

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事