【岩本輝雄】エスパ高橋のPK献上。正直、タックルするとは思わなかった。数的優位でボールも外に流れて...でも彼を責める気はまったくないね

2023年12月02日 岩本輝雄

“聖地”の雰囲気は最高だった

PK献上の高橋。悔しいはずだけど、この経験をバネにさらに強くなってほしい。(C)SOCCER DIGEST

 国立に5万3264人。"聖地"の雰囲気は最高だったね。J1昇格プレーオフ決勝、ヴェルディ対エスパルスは1-1。ドロー決着だったけど、引き分けでもOKのヴェルディがJ1への切符を掴み取った。

 Jリーグが始まる前の92年のナビスコカップ決勝も、ヴェルディ対エスパルスだった。あの時もたくさんお客さんが入っていたよね。そんな昔のことも思い出しながら、今回の"オリジナル10"同士の対決を現地で観戦した。

 序盤はエスパルスのペース。果敢な攻撃でいくつかのチャンスを作り出す。やっぱりというか、乾にボールが入ると何かが起きそうな雰囲気がした。

 ヴェルディからすれば危険な存在だ。それだけに、乾をよく見ながら、要所を締めたディフェンスで対抗。しっかりと守りながら、ヴェルディも徐々に盛り返していく。リスク管理を怠らず、バランスを崩さないように攻撃に出ていく。

 前半は0-0。迎えた後半は、ヴェルディが少し攻勢だった。でも、先制したのはエスパルス。相手のハンドで得たPKをサンタナが確実に沈めた。

 ビハインドのヴェルディは当然、さらに攻撃に力を入れていく。終了間際の猛攻は凄かったね。それが実ったのが、アディショナルタイムの4分。自陣からのパスに抜け出した染野がペナの中でファウルをもらい、PKをゲット。これを染野が決めて1-1。ヴェルディが土壇場で追いつき、試合はそのままタイムアップ。

 悔やまれるのは、染野を止めようとした高橋のタックルだ。僕は2階席から見ていたけど、正直、あの場面で滑るとは思わなかった。
【動画】東京VのPK獲得シーン
 染野1人に対し、エスパルスの選手は高橋を含めて、ゴール前に3人。数的優位で、高橋が無理に止めようとしなくてもよかった。遅らせる守備で十分だったと思う。

 染野のドリブルも、ボールはゴール方向には転がっていなかった。たしかにペナの中には入っていたけど、ちょっと外に流れる感じだったから、そこでアタックする必要はなかったんじゃないかな。

 あれがペナの外だったら、タックルしてもいいと思う。でも、ペナの中は細心の注意を払うべき。反則を取られれば、致命的なピンチになるわけだから。

 悔やまれるワンプレーだと思う。でも、高橋を責める気はまったくない。ディフェンダーはたった1つのミスで勝敗を左右してしまう。どれだけシュートを外しても、たった1本のシュートを決めてヒーローになれるフォワードとは違う。

 結果的には、あのPKがなければ、という話にもなる。でも、そこだけにフォーカスするのはフェアじゃない。攻撃陣が2点目を取っていればよかったという見方もある。

 これまで高橋に救われてきた部分はたくさんあるはず。本人は責任を感じているかもしれないし、悔しいはずだけど、でもこの経験をバネに、さらに強くなってほしいと思う。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。

【PHOTO】16年ぶりのJ1昇格!国立で選手を後押しし続けた東京ヴェルディサポーターを特集!
 

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