仲間たちはU-17W杯で奮闘。「かたや僕は県予選決勝でわずか38分間のプレー」。昌平MF山口豪太がぶち当たった壁。成長という階段の踊り場で何を思うか

2023年11月22日 安藤隆人

うつむいたままベンチのほうへ

悔しい途中交代となったが、チームの勝利には笑顔を浮かべた。写真:安藤隆人

 注目のルーキーが今、壁にぶち当たっている。

 昌平の1年生MF山口豪太は、正確な左足と鋭いボディシェイプ、軽やかなステップワークを武器にドリブルで次々と相手をかわしていくアタッカーだ。

 昌平の下部組織にあたるFCラヴィーダで中心選手だった彼は、中学2年生の時に背番号10を付け、高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権でチームを準優勝に導いた。昨年3月にはJヴィレッジカップで昌平の10番を背負ってプレーし、2、3人を一気にかわしていくドリブルを披露するなど強烈なインパクトを残した。

 その後も中学3年生にしてプリンスリーグ関東1部でプレーし、今年は6月のU-17ワールドカップのアジア最終予選にあたるU-17アジアカップで、高校1年生ながらメンバーに選出され、グループステージ第2戦のベトナム戦と第3戦のインド戦に途中出場し、1得点を記録した。

 華々しい活躍からさらなる飛躍を期待されている山口は、U-17W杯がインドネシアで開催されている時期に、日本で選手権予選を戦っていた。

 埼玉県予選決勝の浦和南戦で、山口は左サイドハーフとしてスタメン出場。しかし、ボールにあまり絡めずにいると、1-0で迎えた前半30分過ぎに、昌平ベンチが動く。交代メンバーをピッチサイドに準備させて、副審が交代ボードを掲げると、山口の背番号である14番が記されていた。

 山口は反対側のタッチラインからピッチを後にすると、うつむいたままベンチのほうへ歩いて行った。

 それからはベンチで最後まで戦況を見つめた。結果は昌平が2-0で勝利。追加点を決めたのは、山口と代わって左サイドハーフに入った2年生の三浦悠代だった。
 
 勝利した時は仲間と喜びを分かち合った山口。試合後に彼の本音に迫ると、そこには等身大の姿があった。

「空中戦や縦への展開が増えていくなかで、自分のボールを受ける場所が見当たらなくなってきて、戸惑っている自分がいました。なんとか存在感を出そうと、中盤の選手がボールを持った時に背後で受けようとか、スペースを狙っていたのですが、徐々にゲームから消えていった印象があります」

 キックオフから自分の持ち味を出せなかっただけではなく、ゲームの流れに乗り切れなかった。交代が準備された時、山口はすぐに自分だと思ったという。

「悠代君が準備している段階で『僕だな』と思った。悔しい気持ちはあったけど、仕方がないと思いました」

 ピッチからベンチに戻るまでの間、自らに問いかけ続けた。

「切り替えるしかないと思う一方で、中学から高校に上がって、守備や崩しの部分で貢献しないといけないと思っていました。それこそが自分が取り組むべき課題だと思って、今年はやっていたのですが、それがここで改めて大きな課題になっていると気付かされた。乗り越えなきゃいけない壁にぶつかっていると思います」

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