連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】浦和 抜け目ない2ゴールに「脱・勝負弱さ」の予感

2016年02月25日 熊崎敬

いままでの浦和から変わることができるのか。

相手のミスを突いた興梠(右)が、貴重な追加点をPKで奪う。抜け目ないゴールで粘る相手を振り切ったこの勝利は、浦和にとって大きな意味を持っているかもしれない。 (C) SOCCER DIGEST

 抜け目ないふたつのゴールによって、浦和がACL初戦を白星で飾った。
 
 8分に生まれた先制点は、敵のDFとGKがお見合いした隙を武藤が突いたもの。65分に生まれた追加点のPKも、敵のDFがボール処理を誤ったところを興梠が一気にかっさらい、巧みにGKのファウルを誘った。
 
 戦術的な完成度は高いものの、我慢比べや乱戦に弱さを見せてきた浦和だけに、こうした勝利は意味があるかもしれない。
 
 立ち上がりの浦和の軽快な動きは、目を見張るものがあった。シドニーが5-4-1と守備的な布陣で受け身に回ったことにも助けられたが、攻守の切り替えは素晴らしく早く、ほとんどの局面で敵を圧倒した。
 
 シドニーのGKがボールを拾い、素早く投げようとしても、ピッチに広がった仲間にはぴたりと敵のマークがついている。どこに行っても赤に囲まれてしまうのだ。浮足立ったシドニー守備陣はミスを犯し、それを武藤がゴールに結びつけた。
 
 だが、シドニーが徐々に浦和の出足に慣れてくると、戦況は互角に近い状況となる。浮いたボールを多用して、激しい当たりを繰り出すシドニーの攻めに浦和は手を焼くようになった。
 
 前半が1-0で終わったとき、私は浦和が追いつかれる展開も十分あると考えていた。
 
 この嫌な流れを断ち切ったのが、途中出場の興梠だった。攻守が切り替わった瞬間、一気に前線に駆け出し、敵のクリアミスを拾ってペナルティエリアに突進。GKに倒されてPKを獲得する。これを自ら決めて、粘るシドニーを突き放した。
 
 浦和としてみれば、試合がもつれた後半に得点源の興梠を新たに投入できたのは大きかった。ズラタンの1トップにある程度の計算が立てば、こうした「リレー」で膠着を打破することもできるだろう。
 
 浦和は、いままでの浦和から変わることができるのか。タフな相手がひしめくACLは、その試金石となりそうだ。
 
取材・文:熊崎敬
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