【広島】丹羽の「ニア来るかな」の声にも惑わず。「寿人らしいゴール」の舞台裏

2016年02月20日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「ゴールの場面は当てに行った。自分の一番の特長を出せた」

代名詞的なニアサイドへの果敢な飛び込みからのゴールで、佐藤が均衡を破る。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 相手が警戒するなか、敢えてそこで勝負して、結果を残す――。ゼロックス・スーパーカップで生まれた今季公式戦初ゴールは、「ストライカー・佐藤寿人」の凄さを改めて知らしめるものだった。
 
 前半、佐藤はG大阪の丹羽大輝、今野泰幸の老獪なCBふたりの前にボックス内で勝負できず、シュートは0本。佐藤によれば、丹羽から「ニアに来るかな」と駆け引きの言葉を何度もかけられていたという。ファーに行く選択肢もあるが、それではDFが対応するスペースも生まれてしまうゆえ、「相手にとって一番守りにくい、危険なエリア」(佐藤)であるニアでの勝負にこだわった。
 
 そして51分、塩谷司のシュート性のクロスにニアへ飛び込み、左足を目一杯伸ばしてゴールネットを揺らした。佐藤は塩谷に対し「高い位置でボールを持った時に、自分を見てくれ」「シュート性の早いボールをDFとGKの間に入れてくれ」と練習から要求してきたそうだが、「なかなか上手くいかなくて、やっと通った」(塩谷)ワンチャンスをきっちり仕留めるあたりは、「寿人さんらしいゴール」という塩谷の言葉がまさに相応しい。
 
「ゴールの場面は当てに行きました。あれは(足を)振ってはダメ。ああいった(ニアでの)ゴールが少なくなってきているなかで、自分の一番の特長を出せたので良かった。相手のDFからニア来るかな、ニア来るかなと言われていたんですけど、ニアに行ってゴールを取ったわけですから気持ち良かったですよ。塩谷さまさまです(笑)」
 
 J1通算最多得点記録の更新に期待が懸かる大エースは「味方に自分のことを知ってもらうことで、ゴールが生まれる」とチームメイトへの感謝を忘れない。昨季最終戦でJ1通算得点は157に達したが、それにちなみ57個のクラッチバッグをアシストしてくれた人たちにプレゼントして回ったという。
 
 佐藤はシュートで左足を伸ばした際、左足のハムストリングに違和感を覚え、その後大事を取ってピッチを後にしている。それもリーグ戦、ACLと過密日程を乗り越えるためには必要な決断だろう。
 
 また、ドウグラスが抜けた前線は佐藤、柴﨑晃誠、茶島雄介の既存戦力で前線3枚が組まれたが、「コンビネーションは少なかった」と今後への課題を口にする。3年目の皆川佑介や、京都から加入した宮吉拓実も含めて前線は駒が豊富な状況だけに、ゴールを決めても、「どんな組み合わせでも結果を残さないといけない」と気を引き締める。プロ17年目となる2016シーズン、希代のストライカーがどこまでゴール数を伸ばすのか、一瞬も目が離せない。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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