面白いサッカー」というお題目は最初から捨てている
アトレティコ戦で先制点を呼び込んだ上田。(C)Mutsu FOTOGRAFIA
チャンピオンズリーグ(CL)、第2節。過去10年で2度、CLファイナリストになっているアトレティコ・マドリーは、フェイエノールトを相手に苦しみながらも3-2と逆転で勝利を飾っている。
ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコは、決して華やかなサッカーはしない。5-3-2でブロックを作り、とにかくミスを誘う。堅牢さ、どう猛さ、周到さで、ほんのわずかな差を突いて相手を上回り、勝利を手にする。
「苦しみの後に勝利はある」
それがアトレティコのフィロソフィーだ。
上田綺世を擁するフェイエノールトには、十分に勝つチャンスがあった。
上田自身、開始早々に味方のパスを引き出し、裏に抜け出すと、GKヤン・オブラクと一対一に。並走してきたディフェンダーよりも早く、足を振っている。GKがブロックしたボールがディフェンスに当たって、ゴールネットを揺らした。結果はオウンゴールとなったが、一連の動きはアトレティコのディフェンスを出し抜き、ストライカーとしてのセンスを感じさせた。
【動画】惜しくも初得点ならず!上田のシュートが呼び込んだオウンゴール
ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコは、決して華やかなサッカーはしない。5-3-2でブロックを作り、とにかくミスを誘う。堅牢さ、どう猛さ、周到さで、ほんのわずかな差を突いて相手を上回り、勝利を手にする。
「苦しみの後に勝利はある」
それがアトレティコのフィロソフィーだ。
上田綺世を擁するフェイエノールトには、十分に勝つチャンスがあった。
上田自身、開始早々に味方のパスを引き出し、裏に抜け出すと、GKヤン・オブラクと一対一に。並走してきたディフェンダーよりも早く、足を振っている。GKがブロックしたボールがディフェンスに当たって、ゴールネットを揺らした。結果はオウンゴールとなったが、一連の動きはアトレティコのディフェンスを出し抜き、ストライカーとしてのセンスを感じさせた。
【動画】惜しくも初得点ならず!上田のシュートが呼び込んだオウンゴール
おかげで絶好のスタートを切ったにもかかわらず、フェイエノールトは逆転される。
アトレティコは、「面白いサッカー」というお題目は最初から捨てている。どれだけ打たれても辛抱強く守り、必ずやってくる反撃の機会に神経を研ぎ澄ます。それに見合った選手も揃えている。
同点弾を決めたスペイン代表FWアルバロ・モラタは、パスがカットされたところ、こぼれたボールを見逃さず、一瞬の集中力で左足を振って、ネットに蹴り込んでいる。その躊躇いのなさと震えるような冷静さは、才能と言える。彼はスナイパーのように、"一瞬"に慣れている。3点目も、アーリークロスに対して確信をもって飛び込むと、わずかに触ってゴールに叩き込んでいるのだ。
<刹那で勝負を決める>
それが欧州で覇権を争ったチーム、選手たちの底力と言えるかもしれない。
アトレティコは2点目も、フランス代表アントワーヌ・グリーズマンがオーバーヘッドのような形から後ろ向きで決めている。前半終了間際、魔が差す時間帯のCK、そのこぼれを見逃さなかった。陳腐な言い方をするなら、勝利への執念になるか。相手が気を抜いたわけではないが、"ここぞ"という瞬間を逃さない。
フェイエノールトも、上田も、十分に力は示した。ボールを持って主導権を握り、あと一歩で倒すこともできたかもしれない。サッカーの質としては、何ら引けは取らなかった。
しかし、そのわずかな差にこそ、勝者の歴史を重ねてきたアトレティコの神髄があるのだろう。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
「開始7分ですでに…」CLデビューのフェイエノールト上田綺世を現地メディアが称賛!指揮官も満足「貢献してくれている」
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同点弾を決めたスペイン代表FWアルバロ・モラタは、パスがカットされたところ、こぼれたボールを見逃さず、一瞬の集中力で左足を振って、ネットに蹴り込んでいる。その躊躇いのなさと震えるような冷静さは、才能と言える。彼はスナイパーのように、"一瞬"に慣れている。3点目も、アーリークロスに対して確信をもって飛び込むと、わずかに触ってゴールに叩き込んでいるのだ。
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アトレティコは2点目も、フランス代表アントワーヌ・グリーズマンがオーバーヘッドのような形から後ろ向きで決めている。前半終了間際、魔が差す時間帯のCK、そのこぼれを見逃さなかった。陳腐な言い方をするなら、勝利への執念になるか。相手が気を抜いたわけではないが、"ここぞ"という瞬間を逃さない。
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しかし、そのわずかな差にこそ、勝者の歴史を重ねてきたアトレティコの神髄があるのだろう。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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