【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.9~1998-99シーズン ~

2016年02月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

スペクタクルなシーズンの末に、歴史的偉業を成し遂る。

イングランド史上初のプレミアリーグ、FAカップ、CLの“トレブル(三冠)”を達成し、ユナイテッドは頂点を極めた。 (C) REUTERS/AFLO

 この1998-99シーズンはユナイテッドにとって、イングランド・サッカー史上初となる"トレブル(三冠)"を成し遂げた、忘れ得ぬ1年となった。
 
 今でもサッカー史にも燦然と輝くユナイテッドの大偉業だが、その道のりは決して平坦なものではなく、幾多のライバルたちとの激戦の末に手にした栄光だった。
 
 第19節から無敗で首位を快走し続けたプレミアリーグよりも、このシーズンのユナイテッドにとって最大のハイライトは、幾多の苦難を乗り越えてきたカップ戦での戦いぶりだ。
 
 FAカップは、4回戦でリバプールを終了間際のオレ・グンナー・スールシャールの一撃で撃破し、6回戦ではチェルシーを再戦の末に制すなど、強豪を退けてアーセナルとの準決勝へと駒を進めた。
 
 1999年4月11日、ホームにアーセナルを迎えて臨んだ一戦は、ロイ・キーンのゴールが疑惑のオフサイド判定で取り消されたこともあってスコアレスドローに終わり、3日後の再試合で決着をつけることになった。
 
 後にユナイテッドのクラブ史においても指折りの名勝負と呼ばれるリマッチは、まさに攻防戦だった。
 
 17分にデイビッド・ベッカムが先制ゴールを挙げるも、69分にデニス・ベルカンプが同点弾を決めて振り出しへ。その後、ユナイテッドはニコラ・アネルカのゴールがオフサイドで取り消される幸運と、試合終了間際のアーセナルに与えられたPKを気迫のセーブでストップした守護神のペーター・シュマイケルに助けられ、窮地を凌いだ。
 
 延長戦に突入した息詰まる熱戦に終止符が打たれたのは114分。パトリック・ヴィエラのパスミスを拾ったライアン・ギグスがハーフウェーラインから独走し、鮮やかなドリブルでの一撃を見舞ったのだ。
 
 こうして240分の激戦を勝ち抜いたユナイテッドは、決勝でもニューカッスルを撃破。難敵だらけだったFAカップを制したのである。
 
 二冠を手中に収めたユナイテッド。そして1999年5月26日、カンプ・ノウに乗り込んで、「トレブル」が懸かったバイエルンとの決勝に臨んだ。
 
 同組だったグループステージでは、2戦ともドロー。決着をつける一戦でリードしたのは、ユナイテッド同様に三冠を目指していたバイエルンだった。試合開始直後の6分、マリオ・バスラーが決めた。
 
 先手を取られたユナイテッドは、バイエルンの堅牢を打ち崩す術を見出せないまま、時間を浪費し続けてロスタイムに突入。この頃には誰もが、ドイツ王者の欧州制覇を確信し始めた。
 
 しかし91分、ユナイテッドの"奇跡"はここから始まった。
 
 ベッカムが蹴ったCKをバイエルンが懸命にクリアすると、これをギグスがダイレクトでシュート。ゴール前にいたテディ・シェリンガムがわずかにコースを変えて押し込み、土壇場で同点とする。
 
 ドラマは終わらない。さらにその2分後、再びCKからシェリンガムが頭ですらしたボールに鋭く反応したスールシャールが、右足でゴールの天井に突き刺して逆転に成功したのだ。
 
 これ以上ない劇的な幕切れで、ユナイテッドは31年ぶりの欧州制覇&イングランド・クラブ史上初の三冠を達成したのだった。
 
 この栄光に満ちたシーズンの終了とともに、8シーズンにわたってユナイテッドのゴールマウスを守り続けてきたシュマイケルが退団を発表。俊敏な反応、カウンターの起点となる高精度のキックなど完全無欠と呼ばれたこの守護神の後継者探しに、ユナイテッドは長い間、悩まされることとなる。
 

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