【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.8~1997-98シーズン ~

2016年02月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

大失態! 圧倒的優位をアーセナルに覆されたユナイテッド…。

トッテナムから530万ユーロ(約7億4200万円)で移籍してきたシェリンガム。引退したカントナの後釜として、確度の高いポストプレーでコールの得点力を引き出した。 (C) REUTERS/AFLO

 1997-98シーズンのユナイテッドは、前シーズン終了後に突然の引退を発表したエリック・カントナの穴をいかにして埋めるか?――という問題に直面していた。
 
 解決策として、最前線の一角には31歳の経験豊富なイングランド代表ストライカー、テディ・シェリンガムをトッテナムから補填。さらにカントナ引退で空き番となった伝統の背番号7は、若手のホープ、デイビッド・ベッカムが受け継ぎ、クラブの新たなアイコンとしての役割を務めることとなった。
 
 シェリンガムが早期にフィットしたこともあり、前半戦のユナイテッドは快調に飛ばす。2月28日のチェルシー戦を終えた段階で、2位アーセナルに勝点11差をつけ、首位を独走していた。
 
 そのあまりの強さに、ブックメーカーの『BET FRED』がユナイテッドの優勝に賭けたユーザーにいち早く支払いを行なったほど。もはや、彼らのプレミアリーグ3連覇を疑う者はほとんどいなかった。
 
 しかし、そんな強すぎるチームにひたひたと迫る影があった。その正体は、前シーズン途中に名古屋グランパスからフランス人指揮官のアーセン・ヴェンゲルを招聘していたアーセナルだった。
 
 チェルシーやブラックバーンが優勝戦線から離脱していくなか、アーセナルは後半戦に入ってから怒涛の追い上げを見せ、3月14日(31節)には敵地に乗り込んでユナイテッドと直接対決。これをマルク・オーフェルマルスの一撃で制し、勝点差を6に縮めることに成功した。後にヴェンゲルは、「あの時に優勝を確信した」と語っている。
 
 アーセナルの追撃を受け、徐々に焦りの色が濃くなり始めたユナイテッドは、直接対決後こそ2連勝を飾ったものの、続くホームでのリバプール戦、ニューカッスル戦で連続ドロー。これが致命傷となり、アーセナルに勝点差1で優勝をさらわれる大失態を犯してしまったのである。
 
 チャンピオンズ・リーグはベスト8止まり、FAカップでは昇格組のバーンズリーに敗れ、さらにリーグカップも格下のイプスウィッチにまさかの敗戦。カップ戦においても目立った功績を残せず、ユナイテッドは無冠のまま、失意のシーズンを終えた。
 
 一方のアーセナルはFAカップも制してダブルを達成。それまで「Boring Arsenal(退屈なアーセナル)」と言われていたチームを再生させたヴェンゲルが高評価を受けたのは言うまでもない。
 
 そしてこのことは、それまで目ぼしいライバルのいなかったアレックス・ファーガソンにとって、初めて好敵手が登場したことを意味した。
 
 以降、覇権争いを繰り広げていくユナイテッドとアーセナルの対戦は、ふたりの指揮官によるプライドのぶつかり合いという側面も持つようになっていくのであった。
 
◎1997-98シーズン成績
リーグ:2位(23勝8分け7敗・73得点26失点)
FAカップ:5回戦敗退(対バーンズリー)
リーグカップ:3回戦敗退(対イプスウィッチ)
チャンピオンズ・リーグ:準々決勝敗退(対ユベントス)
 
チーム内得点ランキング(プレミアリーグ):コール(16点)、シェリンガム(9点)、ベッカム(9点)、ギグス(8点)、スコールズ(8点)、スールシャール(6点)、バット(3点)、ポボルスキ(2点)、キーン(2点)、アーウィン(2点)、ヨンセン(2点)、ベルグ(1点)、P・ネビル(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN
DF ベルグ(←ブラックバーン)
FW シェリンガム(←トッテナム)
 
◇OUT
DF マードック(→プレストン)
MF デービス(→ルートン)
MF アぺルトン(→プレストン)
 
 
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