【鳥栖】河原創と手塚康平の2ボランチが見せた“縦の関係性”がチームの武器に「それぞれの特長を活かすための配置」

2023年09月16日 岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

「準備してきた部分は出せた」

チームに安定感をもたらしたボランチコンビの河原(左)と手塚(右)。写真:滝川敏之

[J1第27節]横浜 1-1 鳥栖/9月15日/ニッパツ三ツ沢球技場

「かなりパーフェクトなゲームができました」

 9月15日の横浜F・マリノス戦後、サガン鳥栖の川井健太監督が自信を持って語った。

 指揮官が口にした手応えの通り、アウェーチームの戦いぶりは見事だった。相手の強烈なハイプレスを丁寧なビルドアップと思い切ったロングフィードを交えながらかい潜ると、右サイドは岩崎悠人のスピード、左サイドは長沼洋一と菊地泰智のコンビネーションで局面を突破。クロスから多くのチャンスを創出した。

 守備でも最終盤に1失点したものの、"超攻撃的サッカー"を掲げる昨季王者のアタッカー陣を多くの時間で沈黙させた。自陣エリア内で強さを見せた山﨑浩介、ファン・ソッコのCBコンビの活躍ぶりも素晴らしかったが、チームとして敵陣、ピッチ中央部、自陣でそれぞれ何をすべきかがしっかりと整理されていた点が印象的だ。

 横浜を大いに苦しめた要因のひとつが、ボランチで攻守に存在感を示した河原創と手塚康平だ。互いに声を掛け合いながらバランスを取り、ダイナミックなパスで左右に展開すれば、精力的なカバーリングと鋭いタックルでフィルターの役割を十分にこなした。

 このふたりは、時折、縦の関係性を築く。手塚が前に出てトップ下に入り、本来のトップ下の堀米勇輝は一列上がってCFの西川潤と2トップに。後ろに残った河原はアンカー的な振る舞いで最終ラインの前のスペースをひとりで埋めていた。

 この関係性について、試合後に手塚はこう語っている。

「それぞれの特長を活かすための配置です。守備の能力は創のほうが高いですし、僕も前目のポジションが好きなので、お互いにバランスを見ながらやっています」
【PHOTO】鳥栖の出場16選手&監督の採点・寸評。豊富な運動量で広大なスペースを埋めた河原。持ち前の馬力を武器に岩崎は攻守に奮闘
 手塚の言うように、横浜戦では互いの能力が存分に発揮できていた。この背番号7は前に出て相手のボランチを牽制しつつ、攻撃に転じればすぐにチームの状況を把握し、同サイドで攻めるのか、ロングボールで展開を変えるのかを判断。正確なパスでリズムを作った。河原はボランチの相方が前に出る分、守備で管理しなければいけない範囲が増えるが、持ち前の運動量と危機察知力でピンチの芽を潰した。

 河原も今節の出来に手応えを感じているようだった。

「準備してきた部分は出せたかなと。守備に関しては上手くスペースを消しながら戦えたし、攻撃でも相手の穴を突けたと思う。同サイドだけでなく、逆に展開する意識はチーム全体で持てていました。サイドチェンジを上手く使いながら、クロスでチャンスを作れたので、良かったと思います」

 しかし、得られたのは勝点1。手塚も「内容は良かった」としつつも、満足はしていない様子だった。

「プロなので、内容も大事ですが、一番は結果。ここ数試合、勝てていないことを考えれば、サポーターもより勝点3を求めていると思います。そこを取れなかったのは悔しいです」

 横浜戦の引き分けで、鳥栖はリーグ戦7戦未勝利だ。しかし、今節で選手たちが見せたプレーは、くすぶっているチームのそれではなかった。出色の出来を見せたボランチコンビをはじめ、選手全員が昨夜のパフォーマンスを維持できれば、勝点3を手にする日も近いだろう。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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