【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.6~1995-96シーズン ~

2016年02月02日 サッカーダイジェストWeb編集部

大成した“ファギーの雛鳥”たちが成し遂げた偉業。

開幕前には「青二才」と酷評されたベッカム(左上)、ギグス(右上)、スコールズ(左下)、G・ネビル(右下)らユース育ちは、カントナ、ブルースらベテランの支えもあり、シーズン後にはリーグ屈指のタレントへと変貌を遂げた。 (C) Getty Images

 無冠に終わった前シーズンの結果を踏まえ、1995-96シーズンのユナイテッドは開幕前に大幅なチーム改造に着手し、ファーガソン政権の中核を担ってきたポール・インス(→インテル)、アンドレイ・カンチェルスキス(→エバートン)、マーク・ヒューズ(→チェルシー)を放出した。
 
 新たにチームの主力を担ったのは、これまでアレックス・ファーガソンが手塩にかけて育ててきたライアン・ギグス、デイビッド・ベッカム、ポール・スコールズ、ガリー・ネビルらユース上がりの若手たち。そんな新チームには当然、懐疑的な目が向けられた。
 
 開幕戦でアストン・ビラに1-3と大敗を喫した直後は、「子どものような選手たちに何ができる? ユナイテッドは脂の乗った選手を買うべきだ」と切り捨てた元リバプールのアラン・ハンセンのように、大方の人々が、この若者たちではヒューズ、インスの穴は埋められないと予想していた。
 
 事実、このシーズン、プレミアリーグをリードしていたのはニューカッスルだった。ケビン・キーガンに率いられたチームは、レス・ファーディナンド、ダビド・ジノラ、ピーター・ベアズリーを中心に魅力的な攻撃サッカーを展開して開幕からホーム12連勝を飾り、年明け頃には2位に12ポイント差を付けて独走態勢に入った。
 
 早くも優勝を確信し、記念のシャツを作るなど、ファンも含めてニューカッスルの気持ちが浮つき始めると、それを見越していたかのようにユナイテッドは猛追を開始する。
 
 前年のカンフーキック事件の処分が明けた(復帰自体は95年10月)エリック・カントナが指南役としてベッカムら若手に勝者のメンタリティーを植え付け、自信をつけたヤング・ユナイテッド。3月4日、アウェーでの直接対決をカントナの一撃で制してニューカッスルのホーム無敗記録を止めると、一気に加速していった。
 
 冷静さを欠いて失速していくニューカッスルを尻目に快走を続けたユナイテッドは、3月末には首位に立ち、最後は勝点4差でクラブ史上3度目のプレミアリーグ制覇を果たした。
 
 さらにリーグ優勝から6日後のFAカップ決勝では、宿命のライバルであるリバプールに86分のカントナ弾で1-0の勝利。イングランド史上初の、ダブルを二度達成したクラブとなったのである。
 
 リーグカップ、UEFAカップこそ初戦敗退に終わったものの、その失態を補って余りある偉業を成し遂げた"ファギーとその雛鳥"たち。以降、彼らはユナイテッドの黄金期を謳歌していく――。
 
 
 
◎1995-96シーズン成績
リーグ:1位(25勝7分け6敗・73得点35失点)
FAカップ:優勝(対リバプール)
リーグカップ(コカコーラカップ):2回戦敗退(対ヨーク)
UEFAカップ:1回戦敗退(対ロートル・ボルゴグラード)
 
チーム内得点ランキング(プレミアリーグ):カントナ(14点)、コール(11点)、ギグス(11点)、スコールズ(10点)、ベッカム(7点)、キーン(6点)、シャープ(4点)、マクレア(3点)、バット(2点)、ブルース(1点)、アーウィン(1点)、パリスター(1点)、メイ(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN
GK コトン(←マンチェスター・C)
DF プルニエ(←ボルドー)
 
◇OUT
MF インス(→インテル)
MF カンチェルスキス(→エバートン)
FW ヒューズ(→チェルシー)
 
 
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