久保がトップ下で無双も、ドイツ戦とは“表現力”に大きな差があったトルコ戦。後半に最終ラインがズルズルと下がった原因は…【コラム】

2023年09月13日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

ドイツ戦よりも面白味に欠けた内容

GKシュミットの好セーブがなければ、あるいは...。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ドイツ戦に続き、トルコ戦でも4ゴールを奪って勝利。しかし、試合内容を比較すると、ドイツ戦のパフォーマンスとトルコ戦のそれでは"表現力"に大きな差があった。

 個に目を移せば、トップ下で無双した久保建英、2ゴールを決めた中村敬斗など及第点以上の活躍を見せた選手はいた。それでも、トルコ戦はドイツ戦よりも面白味に欠ける試合だったと、そう感じるゲームでもあった。

 その要因のひとつはコンパクトな守備を継続して実践できなかった点にある。冨安健洋と板倉滉のCBコンビを軸にハイラインを保ったドイツ戦と違って、トルコ戦は最終ラインの位置がいまひとつ定まらず、3-1で迎えた後半は4バックがズルズルと下がる傾向にあった。

 シュミットの好セーブがなければ、あるいは逆転されていたかもしれない。それほど押し込まれる時間帯があった点を見逃してはいけないだろう。

 最終ラインが不安定だった背景には、ボランチの一角に入った田中碧のはっきりしないポジションニングがあったと見る。もう少し寄せていいはずの場面で寄せず、その結果、全体のマークがずれて、シュートに持ち込まれるシーンが何度かあった。
 
 もちろん田中ひとりの責任ではないが、遠藤航、守田英正のボランチコンビと冨安と板倉の両CBで強固な壁を築いたドイツ戦ほどの守備組織をトルコ戦で形成できなかったのは反省材料のひとつだろう。

 一時は2-3と一点差に詰め寄られ、さて、ここからどうなるかという局面でチームを救ったのは途中出場の伊東純也(PKで追加点)であり、試合終盤になって守備に安定感をもたらしたのはこれまた途中出場の遠藤と冨安だった。

 ドイツ戦から10 人もスタメンを入れ替えれば連係が上手くいかないのは当然との見方もできる。ただ、森保監督は次のワールドカップに向けて「選手層も1チームだけではなく、2チーム分、3チーム分というように、よりレベルの高い選手層の中からその都度の活動や大会にベストの選択をしていけるようにしたい」との考えを持っている。3チーム構想という点で、そのレベルに達していない現状を突きつけられたのがトルコ戦だった。

 もっとも、欧州遠征でドイツとトルコにいずれも勝利。それだけでは満足できなくなった日本のレベルはカタール・ワールドカップ当時よりも間違いなく一段階上がっている。そうしたポジティブな面があるのもまた事実だ。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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