【藤田俊哉の目】痛快だった日韓戦の勝利。ただ、このままなら世界では勝てない

2016年02月01日 サッカーダイジェスト編集部

日韓戦は日本の良い面と悪い面が両方出た試合。

日本は浅野の投入で流れを変え、その浅野のゴールで逆転に漕ぎ着けた。とはいえ、前半から後半立ち上がりまでの戦いぶりはまったくチャンスらしいチャンスを作れなかった。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 まずは日本代表の選手たち、おめでとう! アジア最終予選を無敗で乗り切って、オリンピック出場を決めたのはもちろん、決勝でライバル韓国相手に劇的な展開で勝つことがでた。アジアの頂点に立ったことは素直に嬉しいし、同じ日本人として誇りに思う。
 
 この日のMVPは文句なしに浅野だろう。0-2という状況からピッチに立ち、2ゴールを奪って、まさに逆転勝利の立役者になったのだから。
 
 それにしても、韓国との決勝戦はまさに手に汗握る一戦となった。通常は1点勝負という渋い試合展開になりがちのファイナルで、合計5ゴールを見ることができて、フットボールの楽しさを改めて感じさせてくれた。伝統の「日韓戦」というシチュエーションも手伝って、本当にエキサイティングな内容だった。
 
 とはいえ、パフォーマンスの質を評価すれば、1試合を通して見せた日本のそれは決して褒められたものではない。この予選を通して、日本の一番悪い側面と一番良い側面が同時に出た一戦とも言えるんじゃないかな。
 
 前半の日本は、攻守ともにまったくと言っていいほどリズムを掴めなかった。いつものように相手の攻撃を「受けて立つ」スタイルが通用せず、積極的に攻めてきた韓国にいいようにやられてしまった。日本の生命線として自信を持っていた堅守が機能していなかった。大会を通じて、あんなにスキだらけの日本のディフェンスを初めて見たというのが、僕の印象だ。前半を0-1で折り返したけれど、もっと点差が開いてもおかしくなかった。
 
 しかし後半になると、日本の表情も変わっていった。厳密に言えば、痛恨の2失点を喫し、スーパーサブの浅野を投入してから、というのが正しいだろう。
 
 浅野の俊足を生かす――という日本の戦い方がより鮮明になったからなのか、連戦の疲れから韓国の足が止まってきたからなのか。いずれにせよ、60分以降の日本は、浅野を起点として怒涛の反撃をスタートさせた。ことごとく韓国の"背後"を突くことに成功し、日本は劇的な逆転勝利を飾った。
 
 もっとも、これまでの日本ならば、決勝戦でしかも韓国相手に2点をリードされたら、そのまま負けてしまったんじゃないかな。それが今回は、勝負強さという点でも、韓国を凌駕できたのだから、本当に痛快な試合だった。
 
 チームには指揮官のカラーが色濃く出るものだから、手倉森監督の「負けん気の強さ」が選手たちにもよく浸透していることをこの結果が証明してくれたと言えるだろう。
 

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