今シーズン、躍進を遂げたエイバルの攻撃を牽引する24歳のFW。
得点数はチーム5位の2ゴール(乾と同じ)だが、その貢献度は計り知れない。エイバルにとってケコの去就は、チームの死活問題でもある。 (C) Getty Images
スペインの1月の移籍市場で密かに話題になっているのが、エイバルの攻撃的MFケコだ。
この24歳のスペイン人は、前半戦のリーガで急激に評価を上げた選手のひとり。チームのチャンスメイクのほとんどに絡んでおり、前節グラナダ戦でも乾貴士の得点など、2アシストを記録した。
この試合で注目が集まったのは、それぞれ2得点のボルハ・バストンやセルジ・エンリチュだったが、攻撃の中心が右サイドから切り崩しチャンスメイクするケコであることは明らか。躍進するエイバルの、完全な中核になっている。
アトレティコ・マドリーの下部組織出身。若くしてイタリアはカターニャに移籍したこともあり、国内ではそれほど知られた存在ではなかった。ちなみにカターニャでは、森本貴幸ともプレーしており、乾がエイバルに加入した時には、その話で盛り上がったそうだ。
昨シーズン、アルバセーテに所属していたケコがエイバルに移籍するきっかけとなったのは、ホセ・ルイス・メンディリバル監督の存在があったからだという。
「エイバルを選んだのは、メンディリバル監督がいたからだ。バジャドリーで一緒にやったことがあったから。他クラブからのオファーもあったが、彼に誘われて移籍を決めた。メンディリバル監督の信頼には感謝したいし、期待に応えなければならない」
敬愛する恩師のサッカーが身体に染み付いていたケコは、エイバルにあっさり溶け込んでチームを牽引、躍進の原動力となった。今シーズン、リーガでセンセーショナルな活躍を見せているエイバルは、第20節を終えた時点で勝点33を獲得しており、ヨーロッパリーグ出場圏内の6位につけている。
さらに驚くべきは、バルセロナ、レアル・マドリーの2強に次ぐ得点力を誇っているという事実だ。現時点でエイバルは32点(セルタと同数)を挙げており、首位のA・マドリー(30点)を上回っている。そんなチームの攻撃陣を牽引するケコに注目が集まるのは、至極当然のことと言えよう。
事実、彼には複数のクラブからオファーが届いている。スペイン国内ではセビージャとマラガがすでにオファーを提示済み。エイバルのSD、フラン・ガラガルサもそれを認めている。しかし、エイバルの方針は決まっているという。
「セビージャのモンチSDとも話をしたが、今はケコを出すことはできない。昨シーズンの苦い経験があるから……」(ガラガルサSD)
昨シーズンの前半戦も、エイバルは勢いに乗っていた。しかし、1月に主力のDFラウールアルベントサを売却(60万ユーロの違約金でダービー・カウンティーへ)したことが影響し、後半戦は8連敗を喫するなど、19試合でわずか8勝点しか取れずに、降格の憂き目に遭った(後にエルチェの降格で1部残留)。
ガラガルサSDは、「セビージャやマラガには、違約金1000万ユーロを支払うしか、ケコを獲得する方法はない」と断言。ケコ自身は、ステップアップのためにセビージャ移籍を望んでいるという報道もあるが、果たしてどうなるか――。
1月にケコが放出されるとなると、飛ぶ鳥を落とす勢いのエイバルにとっては、大きな痛手となるのは間違いない。
【2016年欧州冬のメルカート】新天地を求めた主な選手
文:豊福 晋
【著者プロフィール】
豊福晋/1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。
この24歳のスペイン人は、前半戦のリーガで急激に評価を上げた選手のひとり。チームのチャンスメイクのほとんどに絡んでおり、前節グラナダ戦でも乾貴士の得点など、2アシストを記録した。
この試合で注目が集まったのは、それぞれ2得点のボルハ・バストンやセルジ・エンリチュだったが、攻撃の中心が右サイドから切り崩しチャンスメイクするケコであることは明らか。躍進するエイバルの、完全な中核になっている。
アトレティコ・マドリーの下部組織出身。若くしてイタリアはカターニャに移籍したこともあり、国内ではそれほど知られた存在ではなかった。ちなみにカターニャでは、森本貴幸ともプレーしており、乾がエイバルに加入した時には、その話で盛り上がったそうだ。
昨シーズン、アルバセーテに所属していたケコがエイバルに移籍するきっかけとなったのは、ホセ・ルイス・メンディリバル監督の存在があったからだという。
「エイバルを選んだのは、メンディリバル監督がいたからだ。バジャドリーで一緒にやったことがあったから。他クラブからのオファーもあったが、彼に誘われて移籍を決めた。メンディリバル監督の信頼には感謝したいし、期待に応えなければならない」
敬愛する恩師のサッカーが身体に染み付いていたケコは、エイバルにあっさり溶け込んでチームを牽引、躍進の原動力となった。今シーズン、リーガでセンセーショナルな活躍を見せているエイバルは、第20節を終えた時点で勝点33を獲得しており、ヨーロッパリーグ出場圏内の6位につけている。
さらに驚くべきは、バルセロナ、レアル・マドリーの2強に次ぐ得点力を誇っているという事実だ。現時点でエイバルは32点(セルタと同数)を挙げており、首位のA・マドリー(30点)を上回っている。そんなチームの攻撃陣を牽引するケコに注目が集まるのは、至極当然のことと言えよう。
事実、彼には複数のクラブからオファーが届いている。スペイン国内ではセビージャとマラガがすでにオファーを提示済み。エイバルのSD、フラン・ガラガルサもそれを認めている。しかし、エイバルの方針は決まっているという。
「セビージャのモンチSDとも話をしたが、今はケコを出すことはできない。昨シーズンの苦い経験があるから……」(ガラガルサSD)
昨シーズンの前半戦も、エイバルは勢いに乗っていた。しかし、1月に主力のDFラウールアルベントサを売却(60万ユーロの違約金でダービー・カウンティーへ)したことが影響し、後半戦は8連敗を喫するなど、19試合でわずか8勝点しか取れずに、降格の憂き目に遭った(後にエルチェの降格で1部残留)。
ガラガルサSDは、「セビージャやマラガには、違約金1000万ユーロを支払うしか、ケコを獲得する方法はない」と断言。ケコ自身は、ステップアップのためにセビージャ移籍を望んでいるという報道もあるが、果たしてどうなるか――。
1月にケコが放出されるとなると、飛ぶ鳥を落とす勢いのエイバルにとっては、大きな痛手となるのは間違いない。
【2016年欧州冬のメルカート】新天地を求めた主な選手
文:豊福 晋
【著者プロフィール】
豊福晋/1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。