父親は元日本代表でレジェンド。G大阪ユースMF遠藤楓仁は生まれながらの“宿命”とどう向き合っているのか。「苦しんでいたのは事実。でも...」

2023年08月12日 安藤隆人

父のガンバ時代と同じ背番号7

日本のレジェンドを父に持つ遠藤楓仁。その宿命とどう向き合ってきたのか。写真:安藤隆人

 父親は元日本代表でガンバ大阪のレジェンド。G大阪ユースMFは生まれながらの『宿命』とどう向き合っているのか。遠藤楓仁のインタビューコラムをお届けする。

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「常にいいプレーしないと、結果を出さないと言われるのは宿命だと思っています」

 8月7日から石川県で開催されている和倉ユースサッカーフェスティバル。直前の日本クラブユース選手権で優勝したG大阪ユースのMF遠藤楓仁は、和倉ユースの初日を終えてこう口にした。

 彼の言う『宿命』というのは、父親の存在にある。父親は元日本代表でG大阪のレジェンドであり、現在はジュビロ磐田でプレーする遠藤保仁。日本クラブユース選手権決勝のFC東京U-18戦で、父のガンバ時代と同じ背番号7を背負い、チームの優勝を決めるPKを決めたことで一躍その名が知れ渡り、「キックするフォームが似ている」、「立ち姿が似ている」とSNSでも大きな話題となった。

「去年までこんなに騒がれることはなかったので、改めて自分に対する期待は上がってきていると思いますし、それに応えたいのですが、それがなかなかうまくいっていないのが現状だと思っています」

 和倉ユースでは、日本クラブユース選手権で負傷した選手や、年代別日本代表に選ばれた選手は帯同をしていない。遠藤はヴィッセル神戸U-18、帝京大可児高の試合でもボランチとしてスタメン出場を果たしたが、ボランチにはU-17日本代表の宮川大輝など強烈なライバルたちがひしめいており、立ち位置はまだレギュラーではない。
 
「ここでしっかりとプレーをしないといけないと覚悟を持って臨んでいます」

 こう語る遠藤に改めて心の内を聞いた。物心ついた時にはすでに『遠藤保仁の息子』という看板はついて回った。サッカーを始めて年齢を重ねていくにつれて、それがどんどん大きくなっていった。

「小さい頃から『父親と比べられるだろうな、色々言われるだろうな』とは思っていました。小学生の時はガンバのジュニアに入ったことで、その声に苦しんでいたのは事実です。でもジュニアユースに上がってからはもう慣れてきました。父親の看板はもう気にしないようにしています」

 世間の目を気にしない術は口で言うのは簡単だが、かなり難しく時間がかかることなのは間違いない。辛い思いをしながら、その度に自分自身と向き合って、折り合いをつけていく。この作業を重ねていったことで今の『慣れ』がある。それについて聞くと、遠藤はしっかりと自分の考えをこう口にした。

「父親に追いつけないと割り切っている一方で、そこに少しでも近づけるようにチャレンジはし続けようと思っています。今は手の届かない場所に父はいると思っていますが、僕にとって最高のお手本であり、目標であることは間違いありません。だからこそ、ここからどうやって近づいていくかというと、逆に父のウイークであるフィジカル面、守備で上回っていくことだと思うし、技術をひたすら磨いていくこと。ライバル意識や目標意識を持つことで、父の関係性を持ちたいと思っています」

 追いつけないかもしれない事実よりも、せっかく自分の理想像が父、としている環境だからこそ、近づくことを諦めたくない。その気持ちが自分の成長への大事な要素だと理解していたから、遠藤はブレずにサッカーに打ち込んできた。
【動画】遠藤楓仁の父親そっくりなフォームのPK

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