“2”を増やすか、決めるか。「何がいいかなって」。中村俊輔が熟考する個人育成プラン「責任を持つ仕事もある」

2023年08月03日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「自分が何をやると上手くいくか。そこが大事」

横浜FCでコーチを務める俊輔。指導者として貪欲に学ぶ日々を過ごす。(C)SOCCER DIGEST

 練習が始まる直前、中村俊輔コーチは、その日のメニューが書かれたメモに何度も目を通していた。ほどなくすると、両腕を大きく振りながら、身体をほぐす。前にタタタッ、後ろにタタタッと、軽くジョグ。足もとにあるボールをまたいだり、チョンと動かしたり。現役時代によく見た光景だ。そして、またメモを確認する。

 横浜FCで指導者としてのキャリアをスタートさせ、半年以上が過ぎた。コーチという立場で、心掛けていることがある。

「どうやったら選手が上手くいくか。チームがどうやったら上手くいくか。俺個人というよりも、横浜FCのスタッフのなかで、自分が何をやると、チームが上手くいくか。そこが大事。自分の考えばっかりじゃなくて」

 現役を退いて、まだ1年にも満たない。「選手との距離が近いから、選手と話したり、いろんなことができる」。そうした立ち位置で指導ができている。

「それはすごく、ヨモさん(四方田修平監督)には感謝しているというか、そういうふうにさせてもらっている。1年目から、あれもこれもやるというよりかは、だんだん慣れていって、自分で見つけてっていう形でさせてもらえているから、すごくありがたい」

 まだ学びの段階かもしれないが、自身の"色"を出す時もある。自主練の一環で、個人を育成するプラン「IDP」で何をやるかは、俊輔が考える。
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「今日の最後のやつ(シュート練習)とかね」

 チーム全体でやや心もとない得点力をいかに高めるか。たとえば、試合を通じてシュートが7~8本で、枠内に飛んだのは2本。フィニッシュのさらなるブラッシュアップをIDPで取り組む。

「その2を増やす練習と、2を決める練習があるとして、今日は2を"決める"練習。目の前の相手を抜けずに横パス、じゃなくて」

 相手に見立てたダミーをかわしてシュート。俊輔が出し手となり、パスを受けた選手たちが次々とゴールを狙っていく。

 IDPを任せられれば、チームの現状に照らし合わせて、あれこれと思案する。

「コンビネーションでセンタリングの日は、サイドの選手も来てやる。先週は背後の動きとかをやった。そういうのにフォーカスして。何がいいかなって。自分がやらなければいけない仕事、責任を持つ仕事も、もちろんある」

 現役時代と同様に、アイデアはいくらでもあふれ出てくる。今は、それを指導の場で落とし込み、選手たちの成長と進化を促す。記録的な暑さが続く今夏、俊輔も汗びっしょりになりながら、トレーニングに精を出す。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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