【岩本輝雄】1-0で退屈だった? そんなことはない。子どもたちに真似してほしいバイエルンの選手たちのプレー

2023年07月30日 岩本輝雄

“スイッチ”が入った時の迫力は...

フロンターレに1-0で勝利したバイエルン。個々のプレーは質が高くて、見応えがあった。(C)SOCCER DIGEST

 海外クラブのジャパンツアーも盛況。僕もスタジアムに足を運んで楽しませてもらっているよ。高額なチケット代がかさむけど(笑)、めったにない機会だし、世界のトップレベルはやっぱり"生"で見たいよね。

 フロンターレ対バイエルンの試合も国立で観戦。バイエルンがスタニシッチのゴールで1-0の勝利を収めた。

 バイエルンに関しては、シティとの試合も見たけど、以前のような憎らしいくらいの強さは感じられなかったかな。もちろん、まだプレシーズンだし、本来の出来でないのは分かっているけど、組織力は今ひとつで、フロンターレ戦は多くのチャンスを作りながら1点のみ。レバンドフスキの穴はまだ埋められていない印象だ。

 だからといって、見るべき点がなかったと言えば、そんなことはない。組織的な崩しは限られていたとはいえ、個の技術で簡単に局面を打開。サイドチェンジをひとつとっても、ビシッと通してみせる。

 得点シーンを見てもそう。敵陣でボールを奪ったスタニシッチがそのままドリブルして、グラフェンベルフとのワンツーからフィニッシュ。
【動画】バイエルンのスタニシッチが決勝弾!
 特別なことはしていない。ボールを奪って、ドリブルして、ワンツーで、シュート。何でもないアタックだけど、一つひとつのプレーがとにかく正確で、細かい部分だけど、パスの出し手と受け手のポジショニングも完璧だった。

 試合を通じて、バイエルンの選手はどこか身体が重そうだった。でも、要所はしっかりと締める。やや間延びした後半、相手のカウンターで攻め込まれれば、圧倒的なスピードで追いついてピンチを未然に防ぐ。「そこはやらせませんよ」と、"スイッチ"が入った時の迫力は目を見張るものがあった。

 決して守備が弱くないフロンターレを相手に、多くの決定機を作った。序盤の攻勢で、テルがいくつかのチャンスを1つでも決めていれば、最終的なスコアはまた違っていたかもしれない。

 マリノス対シティのように、前者が3点、後者が5点と、たくさんゴールが生まれた試合のほうが、見ているほうとしては面白いかもしれない。じゃあ、1-0では退屈だった? 僕はそんなことはなかった。

 派手さはないかもしれないけど、バイエルンの選手たちのサイドチェンジやワンツー、ポジショニング、勘所を押さえたプレーは十分に見応えがあった。特にプロを目ざす子どもたちには、ゴール以外にも、そういうところも注意して見て、真似してほしいなと思った。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。

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