「盛り上がりが違う」冬の選手権出場を転機に“サッカーの町”にも変化! 新生・国見が真の名門復活にかける秘めた想い【総体】

2023年07月29日 松尾祐希

13年ぶりの夏の全国舞台で初戦を突破!

初芝橋本戦で決勝PKを決めた中山。国見伝統のナンバー10を背負う。写真:松尾祐希

 国見が新たな伝統を作るべく、夏のインターハイで久しぶりの勝利を手にした。

 試合終了のホイッスルが鳴ると、選手たちは喜びを噛み締め、ベンチにいた木藤健太監督は安堵の表情を浮かべた。

 7月29日に開幕した令和5年度全国高校総体(インターハイ)の男子サッカー競技。神村学園(鹿児島)や静岡学園(静岡)といった優勝候補が敗れ、大会から姿を消す一方で、名門復活に向けて勝利を手にしたチームがある。長崎代表の国見だ。

 1回戦は和歌山県代表の初芝橋本に苦戦を強いられ、一進一退の攻防が続いた。「バランスを重視しながら、後半はゲームを作れるようにしたかった」と木藤監督が振り返った通り、後半に流れを引き寄せる。すると、前半15分にFW中山葵(3年)がPKを決めて先制。このリードを最後まで守り切り、13年ぶりに出場した夏の全国舞台で凱歌を上げた。

 かつて小嶺忠敏氏に率いられたチームは高校サッカー界で一時代を築いた。三浦淳寛など多くのJリーガーを輩出し、2000年度には大久保嘉人を擁してインターハイ、選手権を制し、オール国見で臨んだ国体でも長崎県代表として日本一を果たして三冠を達成。しかし、小嶺氏がチームを離れた2007年度以降は結果を残せず、2010年度を最後に選手権からもインターハイからも遠ざかり、めっきり名前が聞かれなくなった。

 しかし、昨冬の高校サッカー選手権に12年ぶりに出場。3回戦で青森山田(青森)にPK戦負けを喫したとはいえ、ベスト16まで勝ち進んで名門復活を印象づけたのは記憶に新しい。
 
 そうした状況下で迎えた今季はメンバーが大幅に入れ替わり、下級生の頃からレギュラーとして活躍していた選手はキャプテンのCB平田大耀(3年)しかいない。FW西山蒔人(3年)やFW中山葵(3年)も試合に絡んでいたとはいえ、先発出場の機会が少なかった。

 経験値は昨年のチームと比べれば、見劣りするのは否めない。実際に春先の県新人戦ではベスト16で敗れるなど、一からチームを構築する作業は険しい道のりだった。しかし、去年の先輩たちが全国大会を勝ち上がるなかで残してくれたモノもある。木藤監督は言う。

「やっぱり勝負に対するこだわりは先輩たちが残してくれたモノ。絶対に何が何でも勝つんだ。そういう執着心は彼らのなかに芽生えつつある」

 個々の能力を見ても、先輩たちよりも少し劣る。だからこそ、チームで戦う術や勝利へのこだわりは去年以上に見せなければ、全国大会で勝ち上がれない。そうした想いを胸にシーズン開幕以降はもう一度ネジを巻き直し、一戦必勝で貪欲にサッカーと向き合ってきた。

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