【高校女子選手権】9年ぶりの頂点を極めた藤枝順心。世界MVPを擁しても届かなかった日本一を実現できた理由

2016年01月11日 西森彰

前半はリードを許すも神村学園に余裕はなかった。

初戦から4戦連発でチームを牽引したFW児野。決勝ではゴールこそなかったものの、相手の警戒を利用して味方のゴールを引き出した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 10年ぶりの神村学園か、9年ぶりの藤枝順心か。467校の頂点を目指す両校の試合は、キックオフ直後から激しい展開の好ゲームとなった。
 
 神村学園は「自分たちらしく、前線からしっかりプレッシャーをかけていく」(寺師勇太監督)というゲームプラン。ここまで6ゴール、しかも4試合すべてで先制点を挙げている児野楓香の動きには、複数の選手が目を光らせた。藤枝順心は、児野への強い警戒心を逆手にとった。
 
「自分にマークがついて他のFWがフリーになっていました。『連動してポジションを変えていったら、どうなるのかな?』というのがありました」(児野)
 
 試合開始から3分、オーバーラップしてきた横澤真衣を起点に、岩下胡桃のヒールパスを経て、肝付萌がフィニッシュ。児野と3トップを組むふたりの連係で、あっさりゴールを陥れた。
 
 神村学園も、夏から公式戦に出始めた渡辺玲奈が、芸術的なヒールキックと思い切りのいいミドルシュートで2ゴール。前半のうちにゲームをひっくり返したが、それはスコア上だけのことと、寺師監督は言う。
 
「私たちは守備で勝ち上がってきたチームなので『前半は0-0でもいい』と選手たちに言っていました。その意味では失点が早すぎました。また、ボールを回されたことが、徐々にボディブローのように効いてきました」
 
 神村学園にとって誤算だったのは、藤枝順心が強さや運動量など、自分たちのストロングポイントでも五分以上に渡り合ったことだ。「上手いというのは知っていましたが、コンタクトがあれほど強いとは思いませんでした。きつかった」と橋谷優里。事実、このゲームの藤枝順心は、ギアを最速にシフトしていた。
 
「相手は攻守の切り替えが早いチームなので、自分たちも切り替えを早くしようと言っていました。いつも以上に意識を高く持ってできたと思いますが、前半から飛ばし過ぎたので、後半はさすがに疲れてしまいました(笑)」(福田ゆい・藤枝順心)
 

次ページ個の能力では昨年のチームが上回るが、したたかな勝負強さを身につける。

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