「俺にボールをよこせ」4足の草鞋を履く44歳・高原直泰のほとばしる情熱。沖縄SVの面々は絶大な信頼

2023年07月11日 元川悦子

8年がかりでJFLに辿り着く

オーナー・社長・監督・選手と4足の草鞋を履く高原。写真:元川悦子

 全国地域リーグチャンピオンシップ2022で、上位2位に入ったブリオベッカ浦安と沖縄SVが新たに参戦する今季のJFL。FC神楽しまねの退会によって、15という変則的なチーム数でリーグ戦が繰り広げられている。

 上位常連のHonda FCがトップを走り、JFL参戦2年目のクリアソン新宿が5位に躍進するなか、JFL初挑戦の沖縄SVは14試合終了時点で勝点9の最下位に沈んでいる。

 ご存じの通り、同クラブをけん引するのは元日本代表FW高原直泰だ。彼がオーナー・社長・監督・選手と、4足の草鞋を履く形で2015年にクラブを創立。2016年の沖縄県リーグ3部北ブロックからスタートし、県1部、九州リーグと少しずつ階段を上がって、8年がかりでJFLまで辿り着いた。

 だが、今季は3月12日の開幕・Honda FC戦で1-3の黒星発進となると、序盤は3連敗。4節のラインメール青森戦でようやく初白星を挙げたが、そこから再び3戦未勝利のトンネルに迷い込んでしまう。

 5月28日のミネベアミツミFC戦で念願の2勝目を手にしたが、その後は未勝利が続いており、想像以上の高いハードルに苦しんでいる様子だ。
 
「JFLを戦うにあたって、チーム全体が甘かったのかなと。開幕当初は昨季までいたところと勘違いをしているようなプレーが目立ち、間違った入りをしてしまった。選手たちの意識を変えるまでにかなり時間を要しました」と監督の高原も厳しい表情で言う。

 それでも、徐々にチーム状態は上向いてきたという。だからこそ、前期最終戦となった7月8日のヴェルスパ大分戦は何としても白星が欲しかった。V大分も4月15日のFCティアモ枚方戦から勝ちがない状態。沖縄SVにも十分チャンスがあると見られた。

 しかもこの一戦は、気温35度の炎天下での15時開始のホームゲーム。相手にしてみれば、本当に過酷としか言いようがない環境だ。日頃からこの気象条件に慣れている沖縄SVのほうが有利に試合を運べると目された。

 背番号10をつける44歳・高原は3-4-2-1の最前線で先発。攻撃の起点として要所で良い働きを見せた。日の丸を背負って2006年ドイツ・ワールドカップを戦った頃のようなキレや強度、運動量はないものの、ボールを収める技術やタイミング、ポジショニングなどは健在だ。

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