腐らず真摯に。約3か月ぶりのリーグ戦出場の川崎GKチョン・ソンリョンが見せたビッグセーブと激怒シーンに込めた想い

2023年07月09日 本田健介(サッカーダイジェスト)

84分のシーンでは烈火のごとく

リーグ戦では約3か月ぶりにゴールマウスを守ったチョン・ソンリョン。無失点勝利に貢献した。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第20節]川崎 3-0 横浜FC/7月8日/等々力陸上競技場

 川崎が横浜FC戦に快勝したゲームで、リーグ戦では4月15日の8節・名古屋戦以来となる約3か月ぶりの先発を飾ったのが守護神のチョン・ソンリョンだ。

 今季は足もとの技術に長けた新戦力の上福元直人が、後方からのビルドアップをより安定させる意味でもゴールマウスを守る機会が増え、背番号1のチョン・ソンリョンはベンチで過ごす時間が増えていた。

 それでも常に真摯にトレーニングに臨む姿は、まさに選手の鏡であり、鬼木達監督も横浜FC戦での起用を「ソンリョンはずっと出ていた中で出られなくなった。その中でもトレーニングの中ではしっかりといいパフォーマンスをしていたと思います」と語っている。

 前節の名古屋戦で上福元が失点につながるファンブルをした影響も少なからずはあったのだろう。指揮官は確実に勝点3を奪いたいゲームで、セービング能力に長けたチョン・ソンリョンの起用を優先したのかもしれない。

 そしてその効果は開始6分に表われた。敵陣でのパスミスからボールを奪われてカウンターを受けると、中盤にスペースが空き、裏を走るMF小川慶治朗にスルーパスを通される。まさに絶体絶命のピンチ。その窮地を救ったのが背番号1だった。
 
 迎えた小川との1対1。「あのポジションで自分にできる最大の反応」と、相手を十分に引き付けながら間合いを詰め、滑り込みながら身体でシュートをブロックしてみせた。

 常に準備を怠らず、ピッチに立てば確実に仕事をする。順風満帆な道のりを歩ける選手なんていない。上手くいかない状況に置かれた時にどう振る舞えるのか、それが選手としてのひとつの重要な価値になるのだろう。その意味で、横浜FC戦で見せたチョン・ソンリョンの姿は、まさに経験豊富な守護神の真骨頂であった。

「(試合に出られない)経験はたくさんしているし、(新井)章太(現・千葉)がいた時も試合に出られないことがあった。その時、その時、その時間がまた一段階レベルアップにつながっていくと思う。僕だけでなくてシーズンが終わるまで、みんなでの競争だと思っています。そのなかで頑張っていきたい」

 彼の背中を見て大事なことを学ぶチームメイトも多いはずだ。

 さらに横浜FC戦ではもうひとつ印象的なシーンがあった。

 2点のリードで迎えた84分、相手のショートコーナーに誰も反応できず、武田英二郎にフリーで打たれた。シュートはゴール近くにいた山田新がブロックして難を逃れたが、直後、烈火のごとく周囲を叱咤したのはチョン・ソンリョンだ。

「あれは言葉にならないと言いますか、集中しろ、緊張しろと伝えました。そこから少し緊張感が高まってくれたと思います。あれも表現方法のひとつだったのかな」

 𠮟るべき時には周囲を叱り、チームのピンチは静かに救う。彼の存在の大きさを改めて感じる一戦となったことは言うまでもないだろう。

 もっともチョン・ソンリョンが望むように、今後も激しいレギュラー争いがチーム力を高めていく。

「練習を実戦のように、実戦を練習のように。それが大事だと思います」

 含蓄のある言葉を残しながら、チョン・ソンリョンは再びピッチに立つための準備を進めていく。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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