地道にコツコツと。偉大な指導者との出会いを財産に、J3岐阜の指揮官・上野優作は揺るぎない基盤作りに専心

2023年07月01日 元川悦子

「選手を動かすのは気持ちの部分」

岐阜で指揮を執る上野監督。「常に上を目ざして戦っていきます」と意気込む。(C)FC GIFU

 2023年からJ3のFC岐阜の指揮を執っている上野優作監督。21~22年末まで日本代表コーチを務めており、森保一監督や横内昭展コーチ(現ジュビロ磐田監督)のコーチングやマネジメントを間近で見ることによって、指導者としての自己研鑽を図ってきた。

 しかしながら、サッカー人としての長いキャリアの間には、上記2人以外の数多くの指導者にも接してきた。筑波大学を経て、アビスパ福岡入りした当時は清水秀彦監督の指導を受けたし、サンフレッチェ広島時代にはエディ・トムソン監督やミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現札幌監督)に師事。京都サンガ時代にはゲルト・エンゲルス監督のもとでプレーしている。

 上野自身が大型FWとして最も輝いたと言われる2003~2005年のアルビレックス新潟時代には、現日本サッカー協会技術委員長の反町康治監督のもとで活躍。当時の経験は今に生きているという。

「反町さんとは3年間、一緒に仕事をしましたけど、ミーティングの仕方や練習メニュー、選手とのコミュニケーションの取り方など、いろいろ感じることはありました。反町さんはあまり選手と話をしない方でしたけど、それもまた、一つの監督像として自分の学びとなっています。一緒にプレーしたモトさん(山口素弘・現名古屋GM)さんのような先輩からも学ぶことは多かったですね」と上野監督は述懐する。

 現役時代のラストとなった2008年、そしてセカンドキャリアを歩み始めた2009年以降に栃木SCで長く共闘した松田浩監督(現テゲバジャーロ宮崎監督)も、恩師と言える人物の1人。インパクトは非常に大きかった。
 
「松田さんは指導者になってから最初の監督だったので、チームマネジメントはもちろんのこと、どうしたら4-4-2のゾーンディフェンスができるか、攻撃の組み立て方といった具体的な練習方法を学びました」

 特に松田監督はミーティング術に長けた指揮官で、選手の心に残る言葉を絶妙のタイミングで口にするのだという。

「『今は苦しい状況だけど、人生には表と裏がある。悪いことだけじゃなくて、良いこともある』といった声掛けは、僕自身もすごく響きましたね。昨季、ガンバ大阪を指揮された時も『松田さんに救われた』と言っていた選手がいたと聞きます。

 やっぱり選手を動かすのは気持ちの部分だと思うので、プレッシャーを少しでも楽にしてあげるだけで、結果は大きく変わってくる。指導者である自分が良い言葉、人の心を揺さぶれる言葉をたくさん持っていれば、それだけ選手のメンタルを前向きにできる。松田さんのようになりたいと思いますね」と、上野監督は最大級のリスペクトを口にする。

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