ウェストハムのイングランド代表MFデクラン・ライスは、アーセナルへの移籍が確実視されている。ここ数シーズン、彼は将来的にクラブを退団すると話していたし、シーズンを重ねるごとにパフォーマンスが良くなっていったから驚きはない。

　僕はウェストハムのファンとして、過去何十年を振り返っても、最高の選手の一人であるライスを失うのは、かなり残念だ。

　しかし、ハマーズファンの中で、ライスの決断に腹を立てる人はいないと思う。もちろん彼が去るのは大きな損失であり、動揺はするだろうが、彼自身がより成長したいという想いを否定はできない。

　クラブのオーナーシップには拍手を送りたい。なぜなら、ライスの売却によってアーセナルから総額１億500万ポンド（約192億円）もの移籍金を手にすると言われているからだ。とはいえ、この資金をどう使うかはまだ分からないし、正直なところ、僕は来シーズンのチームがとても心配ではあるのだけれど...。
 

　ライスはチェルシーのアカデミーからウェストハムにやってきた時から、これまで非の打ちどころのない振る舞いをしてきた。

　例えば、先月、ウェストハムユースがFAユースカップでアーセナルを５－１で下し、優勝を果たした。試合が行なわれたエミレーツスタジアムで観客に混ざり、ウェストハムの若者たちを応援していたのは誰だったのか？ そう、トップチームのキャプテンであるライスだ。

　試合後には、ドレッシングルームで後輩たちと喜びを分かち合い、祝福する姿をSNSにアップしている。彼がどれだけクラブを想っていたのかが分かるだろう。

　ウェストハムを退団することについては、かなり悩んだだろう。ヨーロッパカンファレンスリーグで優勝を成し遂げたあとのインタビューでは、少し感情的にもなっていた。

　ライスは長年、トップレベルのパフォーマンスを披露し、対戦する相手チームの超一流選手たちとも遜色なく戦っていた。スタジアムで見るのが本当にワクワクする選手だ。

　ウェストハムにはそのような選手がそれほど多くなかったからこそ、ライスは重宝され、賞賛された。加えて、その真摯的な振る舞いでファンから愛されたのである。

　いずれにせよ、ライスはピッチ内外でウェストハムに尽くしてくれた偉大な選手だ。今後の活躍を祈る。

文●スティーブ・マッケンジー（サッカーダイジェスト・ヨーロッパ）

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