【高校選手権】東福岡 1-0 駒澤大高|総体王者の大きな強み! スーパーサブ投入で生きる伝統のサイドアタック!

2016年01月05日 平野貴也

2年生MF藤川の投入が二重の効果を生み出す。

後半22分に東福岡は橋本が先制点を決める。藤川の投入から流れを掴んだ東福岡が貴重な1点を守り切り、準決勝進出を決めた。写真:田中研治

 ハッキリ言って、攻めあぐねた――。
 
 第94回全国高校サッカー選手権は1月5日に準々決勝を行ない、夏のインターハイに続く全国二冠を狙う東福岡は、1-0で駒澤大高を下してベスト4進出を決めた。
 
 ただし、連戦の疲労から全体的に足取りが重く、前線からプレッシャーをかけ続ける駒澤大高の守備に苦しめられた。相手が蹴って来るロングボールに対するプレスバックを意識し過ぎた結果、前線と中盤の距離が広がり過ぎて、持ち味である攻撃力が削がれていた。 前半は優位に立ちながらヒヤリとさせられる場面もあり、次第に試合のペースを奪われていった。
 
「ハーフタイムに、1点取られてからでは遅いぞと(森重潤也監督に)言われた」(橋本和征)という後半はチャンスがありながら、なかなか決められなかった。後半8分には右からのクロスをフリーで飛び込んだDF児玉慎太郎が頭で合わせたがゴールの枠を捉えず、後半15分にロングフィードで抜け出したFW餅山大輝がGKをかわした場面も、相手のカバーが来る前に打ち切れず、チャンスをフイにした。
 
 しかし、今大会の東福岡には試合の流れを大きく引き寄せられる選手交代のカードがある。毎試合、スーパーサブとして投入されているのは、夏のインターハイで大活躍を見せた2年生MFの藤川虎太朗。藤川がインサイドハーフに入り、その場にいた橋本が左のウイングに移るパターンだ。
 
 この交代によって、藤川がシャドーストライカーとして多彩な役割を果たすというだけでなく、実は橋本が本来の持ち味を出せるようになるという二重の効果がある。橋本は本来、左のウイングが本職。縦への突破からクロスを供給するという東福岡の伝統であるサイド攻撃の象徴だ。しかし、今大会はインサイドハーフに入る藤川虎太朗の状態が万全ではなく控えに回ったため、スタート時の橋本は、本職ではないポジションを務めている。
 
 東福岡の司令塔であるMF中村健人は「アイツは、真ん中でボールを収めるタイプじゃない。サイドのほうが生きる。その分、裏に抜け出したり、FWとの連係プレーが生まれたりという部分はあるけど(藤川)虎太朗が中にいる方が組み立てはできる。だから、ひとつの交代カードでこれだけ流れが変わるというのは、今のチームの強みだと思う」とスーパーサブ投入の効果を語った。
 
 選手交代から14分後、右からのクロスを相手GKがはじき、橋本がこのこぼれ球に反応。左からゴールへ向かって飛び込み、決勝点となるヘディングシュートを決めた。
「中盤のプレーも好きだけど、今日は中盤で良い流れができなくて、展開もできていなかった。だから、左サイドのほうがやりやすかった。仕掛けて相手陣地に押し込もうと思った」という動きが間接的ではあったが、ゴールにつながった。
 
 攻撃のギアを上げる交代カードは、夏冬二冠に向けたキーポイントだ。左ウイングで先発している2年生MFの高江麗央が縦への突破力を存分に見せていることもあり、藤川の投入で得られる二重効果の威力は絶大だ。
 
 高江が相手のスタミナを削ぎ落し、橋本がポジションをスライドして本来の持ち味を生かす。サイドだけを見ても二段構えの効果は大きい。この先も楽な試合はないはず。状況打開の一手を持っていることは、大きな強みとなる。
 
取材・文:平野貴也(フリーライター)

【選手権PHOTOハイライト】駒沢/準々決勝 駒澤大高×東福岡|星稜×明徳義塾

 
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