カタールW杯で貴重な経験。岐阜の上野優作監督が、J3の現場に落とし込もうとしている世界基準

2023年06月30日 元川悦子

日本サッカー界の歴史的偉業を体感

緻密な指導で岐阜を率いる上野監督。(C)Kaz Photography/FC GIFU

 日本代表としてワールドカップ(W杯)出場経験のあるアスルクラロ沼津の中山雅史監督、福島ユナイテッドFCの服部年宏監督、SC相模原の戸田和幸監督、複数クラブで手腕を振るった百戦錬磨の指揮官として名を馳せるヴァンラーレ八戸の石﨑信弘監督やテゲバジャーロ宮崎の松田浩監督、元日本サッカー協会(JFA)技術委員長の松本山雅FCの霜田正浩監督など、今季のJ3は多士済々の指揮官がズラリと並んでいる。

 こうしたなかにあって、FC岐阜の上野優作監督は、2022年カタールW杯にコーチとして帯同した直後、現場に身を投じた稀有な指導者だ。49歳の新人監督とはいえ、ドイツ&スペイン撃破という日本サッカー界の歴史的偉業を体感し、世界基準を現場に落とし込むことができるのは、非常に大きなアドバンテージと言っていい。

「代表での経験を踏まえて『強度のあるチーム』を作りたいなと考えています。ボールにアプローチに行く強度、ぶつかり合う強度、守備の時に移動するスピード、具体的に言うと、時速14キロ以上のランニングなんですけど、それが試合で何パーセント出ているかといった点を大事にしながら戦っています。

 岐阜では数字をフィジカルコーチが管理していますが、試合をこなすごとにデータが向上しているのは確かです。J2の中位以上でやっていけるレベルに持って行こうと。そこにいないとJ2昇格は達成できないと見ています」と、指揮官は改めて強調する。
 
 JFAの反町康治技術委員長も「ワールドカップ上位国には、ボールを奪い切れる選手が複数いる。アルゼンチンが筆頭で、デ・パウルやエンソ・フェルナンデスなど5~6人はいる。しかし、日本には遠藤航(シュツットガルト)1人しかいない。それを増やしていくことが重要」という話をしていた。上野監督もそれを理解したうえで、デュエルやスピードといった強度を研ぎ澄ませていくべきだと考えている。

「我々の攻撃面で言うと、スピードのある選手が多いので、背後の抜け出しという強みをより発揮できるように仕向けていこうとしています。スピードも強度の1つですし、それが高まれば、敵に脅威を与えられる。守備面のデュエルや当たり、寄せももちろん大事ですけど、チームのストロングを出していくことが勝利への近道かなと感じます」

 日本代表の森保一監督も「形にとらわれず、選手たちにはそれぞれの良さを最大限出してもらいたい」と長所を活かす重要性を口癖のように語っている。2年間、共闘してきた指揮官の哲学は、自然と上野監督の中に染みついているのだろう。

「森保さんとは一緒に仕事をするなかで、多くの影響を受けてきました。選手とコミュニケーションを深く密に取る姿勢は特に凄いなと感じました。出迎え・送り出しなんかは有名ですけど、とにかく選手とじっくり話し込む。強固な信頼関係を築いて、チームを作っていく。そのアプローチはすごく勉強になりましたね」

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