昌平がプレミアリーグ前橋育英戦にかけた想い。半年前の頼りなさはもうない、失いかけていた自信を取り戻す3戦ぶり勝利

2023年06月26日 松尾祐希

OB津久井が後輩に残したメッセージ

Jクラブも注目する昌平の10番・長準喜。写真:松尾祐希

「自分たちを踏み台にして良いから、もっと上を目ざしてくれ」

 この言葉は昨年度の昌平のキャプテン・津久井佳祐(現・鹿島)が、昨冬の高校サッカー選手権で敗退した後のロッカールームで、後輩たちに残したメッセージだ。

 優勝候補の一角に挙げられながら、前橋育英に1−2の逆転負けを喫して3回戦敗退。もっとやれたはず――。相手の勢いに飲まれ、特に下級生たちは強度の面で力不足を露呈した。そうした状況に津久井は、後輩たちに期待を込めてあえて厳しい言葉を投げかけた。

 あれから半年。今季から2種年代最高峰のU-18高円宮杯プレミアリーグEASTを戦っている昌平は、苦戦を強いられた。リーグ戦は2連敗中で、12チーム中10位(第8節終了時点)。主導権を握る試合もあったが、あと一歩のところで競り負けて、思うように勝点を伸ばせかった。

 6月中旬に行なわれた埼玉県のインターハイ予選も、準決勝で浦和南を相手にPK戦の末に敗戦。2−2で延長戦を戦ったが、決定力不足に泣かされて全国大会の出場権を逃している。
 
 Jクラブ注目のアタッカーで10番を背負うMF長準喜(3年)、正確なキックが武器の司令塔・MF土谷飛雅(3年)、精度の高い両足のキックが持ち味の主将CB石川穂高(3年)といった昨季からレギュラーを務めるタレントを擁しながら、先輩の期待に応えるような結果をまだ残せていなかったのだ。

 だからこそ、6月24日に行なわれたプレミアリーグEASTの第9節・前橋育英戦は重要だった。その翌週にはアウェーで、首位の青森山田との試合を控えており、自信を失いかけていたチームを立て直すためにも、勝点3が何よりの特効薬になる。キャプテン石川や長準喜はチームの想いをこう代弁した。

「インターハイ予選で負けて、ここで勝てなかったら、ズルズルいってしまう気がしていた。しかも、今回の相手は前橋育英。去年の選手権で負けてしまい、一昨年のプリンスリーグ関東も1分1敗で全然勝てていなかった。勢いづくには、もってこいのゲームだった」(石川)

「去年の選手権で自分は何もできなかった。何もできなくて終わったっていう想いが強い。そういった意味ではすごく特別な試合」(長準喜)

 そうした状況下で迎えた前橋育英戦。昨冬の選手権で味わった悔しさを晴らすのはもちろん、半年前から自分たちがどれだけ成長したかを示すには最高の舞台となった。

 藤島崇之監督もこの試合の重要性を理解している。試合中に選手へかける言葉が熱を帯びた。

「こんなに言ったのは久しぶりですよ。本当に言いましたから」

 いつもは冷静に戦況を見つめる指揮官も、この日ばかりはテクニカルエリアの最前線で声を枯らした。
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