【高校選手権】桐光学園 3-0 長崎南山|中村俊輔の系譜を継ぐ10番・鳥海が「陰の支配者」として初戦快勝に導く!

2016年01月02日 安藤隆人

エースの小川をはじめとする3トップを操るコントロールタワー。

トップ下として桐光学園の攻撃の起点となり続けた鳥海。独特のセンスを見せつけた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 U-18日本代表FWのエース小川航基を擁して、有力候補のひとつに推される桐光学園が、長崎南山を相手に3-0と快勝。難なく初戦突破を決めた。
 
 この試合の陰のMVPを挙げるとするならば、MFの鳥海芳樹だろう。
 
 2年生ながら、かつて中村俊輔(横浜)も背負った10番を受け継ぐ鳥海は、トップ下としてチームの看板である3トップの攻撃力をコントロールしている『陰の支配者』だ。
 
「3トップはマークされる存在。特に小川さんにはマークが集中する。だからこそ僕が積極的に2列目から背後に飛び出していくことで、相手は捕まえきれないし、そこから3トップの誰かがフリーになる。そうした状況からのパスやシュート、ドリブルによってより効果的な攻撃になる」
 
 天性のセンスを持ち、駆け引きで相手を凌駕できることが、鳥海の最大の魅力だろう。とりわけ変幻自在のドリブルは際立つ。特別なフェイントをしていないのにもかかわらず、コース取り、ボールの置き方、ステップワークで相手の逆を突いて、軽やかに相手をかわしていく。
 
 さらには状況判断にも優れ、味方と相手の位置関係を瞬時に見分けて、プレーを選択できる。フリーの選手を見つけ出す能力にも長け、アタッキングエリアに潜り込んでは、フリーで前向きの選手に効果的なパスを出す。その恩恵を受けているのが3トップなのである。
 
 長崎南山との初戦でも、3トップは鳥海の『恩恵』を受けた。5バックでゴール前を固める相手に対し、「3バックの間と、3バックとウイングバックの間は常に狙っていた」と、得意の飛び出しで果敢に相手のギャップを突くと、ペナルティエリアの両脇に神出鬼没に顔を出して、相手を揺さぶり続けた。
 
 そして、0-0で迎えた49分、得意のドリブルでペナルティエリアの右脇を突破すると、「ハーフタイムで(鈴木勝大)監督から、ニアサイドを徹底して狙え」と言われていたし、小川さんが飛び込んで来るのが見えた」とニアサイドにマイナスの折り返し。これを小川がダイレクトで蹴り込んで、待望の先制点をチームにもたらした。
 
 その後も相手の嫌な場所に潜り込んでは、3トップの攻撃力を引き出し続けた。53分にイサカゼインが2点目を挙げると、71分には小川がPKで加点し3-0。74分にMF鈴木太我と交代し、お役御免となった10番だが、間違いなく陰のMVPと言える活躍だった。
 
「シュートを打ちたかった。僕の中では潜り込んでから、ドリブルや反転シュートというイメージが合ったのですが、フリーの選手がその度に目に入ったので、パスをしてしまった。そこが悔しいです」
 
 この言葉は実に鳥海らしい言葉だった。シュートを打ちたくても、フリーの選手が「見えてしまう」。それは密集地帯でも、アタッキングエリアでも冷静に周りが見えている証拠。裏を返せば強引さが足りないと表現できるかもしれないが、正確な判断で前線を操っていたのも確かだ。
 
 桐光学園の看板を支える『陰の支配者』・鳥海芳樹。3トップの後ろに潜む彼の存在からこれからも目が離せない。

【選手権PHOTOハイライト】等々力/2回戦 桐光学園×長崎南山|青森山田×聖和学園
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
 
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