【高校選手権】市立船橋 3-0 米子北|“ジャガー”や“野人”よりも凶暴!? 「市船のチーター」永藤歩が語ったゴールへの渇望

2016年01月02日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

山形への入団が内定しているアタッカー。“10分間”限定のプレーで、たちまち決定機を作る。

限られた時間のなかで決定機を作り、素早いプレッシングでも貢献した「市船のチーター」永藤。東福岡戦での先発起用はあるか? 写真:徳原隆元

 市立船橋が米子北に3-0の快勝を収めた試合後、歓喜に沸くメンバーや応援団の前で、軽く天を仰いで首を傾げたのがラスト約10分間プレーした市船の背番号10をつける永藤歩だった。
 
 山形への加入が内定しているアタッカーは、8月に左大腿部を傷めて戦線から離脱。その後も怪我を再発させるなど苦しみながら、全国選手権の地区予選決勝の流通経済大柏戦でようやく復帰を果たした。ただ、チーム内の競争は一段と激化し、本来のエースの永藤でさえもレギュラーの座が確約されない状況に。現在の彼について朝岡隆蔵監督は「怪我の状態は問題ない。ただコンディション的にまだ上がってきていない」と説明。そのため、この今大会初戦となった米子北戦はベンチスタートとなった。
 
 それでも限られた時間のなか、永藤は非凡なセンスを何度か見せた。交代出場した直後、米子北の最終ラインと並走しながら一気にスピードを上げて裏のスペースを突くと、パスを受けてゴールライン沿いにドリブルで刻み、FW矢村健へ決定的なクロスを放った。
 
 その後もたちまちトップスピードに入る弾丸のような快足を活かし、相手のマーカーを混乱に陥れた。加えて、そのスプリント力はプレッシングでも効果を発揮して、市立船橋の快勝に守備面でも貢献した。
 
「(怪我の状態について)なんの問題もない。最初から出たい気持ちは強い。前に向かっていくのが自分の良さ。あの短い時間のなかでも、点を取りたいと思っていた」
 
 そう語る永藤はクロスを放った場面について、「ゴールを決めたかったから、そのままシュートに持ち込んでも良かったかなと思っている」と悔やんでいた。

 公式戦では、しばらくゴールから遠ざかっている。とにかく結果を残したいという欲望が増すなかで、1月3日、昨年夏のインターハイ決勝で敗れている東福岡との大一番を迎える。
 
「夏負けているだけに、絶対に勝ちたい。そのためにも、もっと、貪欲にゴールを狙って行きたい」
 
 スピードが売りのタレントと言えば、J1広島の浅野拓磨は"ジャガー"、そして浦和や神戸などで活躍した岡野雅行は"野人"と呼ばれてきた。「市船のチーター」永藤はゴールに対する執着や獰猛さという点で、彼らと共通するものがある。なにより、初速で瞬間的にトップスピードに乗り敵陣を切り裂くその攻撃性は、やはり魅力的だ。山形でもきっと愛される存在になるに違いない(ルックスも抜群だ)。 

 1月3日の東福岡、再び切り札としてベンチに控えるのか、それとも先発に抜擢されるのか、それは分からない。ただ、どのように起用されるにしても、餓えた永藤が狙う獲物は東福岡のゴール――それだけだ。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
 
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