日大藤沢が誇る左SBの俊英が必見! Jクラブが興味を示す“高度なサッカーIQ”で全国の舞台をも席巻するか【総体予選】

2023年06月18日 松尾祐希

「ひとりでも剥がせるし、周りも活かせるので非常に面白い」

日大藤沢の攻撃に幅と奥行きをもたらす尾野。世代別代表のライバルたちにも引けを取らない逸材だ。写真:松尾祐希

 局面を打開する様には、サイドバックとは思えない迫力がある。

 左足から繰り出すクロスの質や足下の技術も水準以上。吉永夢希(神村学園/3年)、藤井葉大(飯塚/3年)、内川遼(市立船橋/3年)など、今年の高校3年生は左サイドバックのタレントが充実しているが、彼らと比べても決して力は見劣りしない。

 高卒でのプロ入りを目ざす成長株が、夏の大舞台で虎視眈々とブレイクの時を窺っている。日大藤沢でプレーする左サイドバック、尾野優日(3年)だ。

 下級生の頃から出場機会を得てきた。横浜F・マリノスJrユースでは2列目が主戦場でドリブル突破を持ち味としていたが、日大藤沢ではサイドバックにコンバート。2年生だった昨季から出番を増やすと、冬の高校サッカー選手権では全3試合にフル出場を果たすまでになった。惜しくもチームは3回戦で敗れたものの、抜群の攻撃センスを発揮して高校ラストイヤーでの飛躍を予感させるパフォーマンスを披露していた。

 迎えた今季もレギュラーとして活躍。得意の攻撃力を武器にチームに欠かせない存在になりつつある。夏のインターハイ予選では他の選手がベンチに下がるなか、尾野だけは交代をせずにピッチに立ち続けてきた。

 そんな尾野に対し、日大藤沢の佐藤輝勝監督も大きな期待を寄せつつ、さらなる成長を求めている。

「ひとりでも剥がせるし、周りも活かせるので非常に面白い。去年は2メートル近いサイズがあった森重陽介(現・清水エスパルス)が前にいたのでハイボールのクロスを入れれば良かったけど、今年はいろんなプレーを我々も求めている。サイドバックでいろんなプレーができるようにならないといけないのは本人も分かっているはずです」
 
 指揮官の思いに応えるように、6月17日に行なわれた予選準決勝・桐蔭学園戦では突破や単純なクロスだけでなく、新たなスタイルを示した。

 内側に立ち位置を取って、ゲームメイクにも関与。センターバックやボランチを上手く助け、ボールが円滑に回るように振る舞ったが、いわゆる"偽SB"のような振る舞いは昨季まであまり見せていなかったプレーだ。

「サイドから攻撃に加わるだけでなく、ボランチのポジションに入って誰が外に回って空くのかを見たりして、さまざまなポジションを取りながらボールを引き出すことを意識していたんです」

 サッカーIQの高さを示したが、なぜそのようなプレーを見せたのか。尾野は今ではなく、自分の未来を切り開くための新たなトライだったと話す。

「自分はフィジカルの強さが特徴ではないので、頭を使う必要がある。高卒でのプロ入りを目ざしているので、やっぱりパワフルなプレーだけではなく、もっと柔軟なプレーができる選手になりたい」

次ページ「全国大会を通じて自分の名前が取り上げられるようになりたい」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事