【采配検証】ただのトレーニングと化した一戦で見えた日本代表選手の“真剣さ”。今後求められるのは指揮官のメリハリ

2023年06月16日 加部 究

手を抜きたくなる攻守の切り替え部分でも…

日本代表はエルサルバドルに6発完勝。ただのトレーニングと化してしまったような試合に。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[キリンチャレンジカップ]日本 6-0 エルサルバドル/6月15日/豊田スタジアム

 海外の現場を経験した指導者に話を聞くと、必ず日本人の長所として挙がるのが「どんな時でも全力で取り組み、探求心に満ちている」という点だ。

 試合を終えた久保建英から「最初から慢心なく」という言葉が出てきたように、こうして欧州でスターダムへ近づきつつある選手でもアジア1次予選並みの試合に最善を尽くす。それは当たり前のようで、海外目線からすると目を見張ることなのかもしれない。

 また、札幌を指揮するミハイロ・ペトロヴィッチ監督は言っていた。

「ドイツだけは、どんな相手に対しても貪欲に何点でも取りに行く」

 日本サッカーの父として愛されるデットマール・クラマー氏によれば「日本はアジアのプロイセン」と呼ばれていたそうだが、こうした気質が近いのも日独の相性の良さに繋がっているに違いない。

 結局、エルサルバドル戦はトレーニングマッチが、ただのトレーニングと化してしまったような試合になった。しかし日本代表選手たちは、本来なら最も手を抜きたくなる攻撃から守備への切り替え部分でもしっかりと汗を流し続けた。
 
 この勤勉さはアマチュア時代からの良き伝統で、例えば1979年に東京で開催されたワールドユース選手権、3戦目のキックオフを迎える時点で、既に日本のグループリーグ敗退は決まっていた。ところがそれでも日本の選手たちは全力を振り絞り、初ゴールと初勝点を記録した。チームを率いた松本育夫監督は「こんな状況でもモチベーションを落とさずに戦えるのは日本チームだからこそです」と力説していた。

 次戦を控える韓国のメディアは、このエルサルバドルを「日本に観光旅行に来た」と報じたそうだが、逆に開始3分のPK→退場劇は真剣だからこその顛末だろう。ただし、そこで決着がついてしまっても、日本の選手たちは集中を切らさずに高い位置でのボール奪取を狙い続けた。

 例えば、この1年間で取り巻く世界が一変した三笘薫はすっかり疲労困憊の様子だったが、それでも現状でのベストは表現しようとした。珍しくぶれてしまったドリブルも含めて、それは真剣さの表れだった。

 久保はハツラツと広域をカバーして攻守への貢献をアピールし、旗手怜央はカタールW杯での落選が大きな誤りだったと証明した。何より初めて十分なプレー時間を与えられた中村敬斗や、デビュー戦でフル出場を果たしアグレッシブな姿勢を示した森下龍矢、さらには短い時間ながら初めてプレー機会を与えられた伊藤敦樹らには、貴重な一歩となる試合だったに違いない。
 

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