献身を心から楽しむFW戸上和貴の“武南カラー”への想い「大好きなこのユニホームと共に全国に戻りたい」

2023年06月16日 安藤隆人

CB→SB→SH→FW

武南の前線で存在感を放つ戸上。インハイ予選準決勝では1得点をマークした。写真:安藤隆人

 第1試合で優勝候補の昌平が浦和南に敗れたのを目の当たりにし、第2試合を戦う武南のFW戸上和貴は大きく息を吐いた。

「僕は昌平を倒すために武南にやってきました。昌平を倒しての全国出場はずっと目標にしてきたことなので、(決勝で)昌平と戦いたかったのが本音です」

 戸上が昌平と戦いたかったのには大きな理由があった。中学時代、彼は昌平の下部組織にあたるFCラヴィーダでプレーしていた。昌平に進むことを目標にしてきたが、中学3年生の時に悩んだ結果、県内の他の高校に進む選択をしたのだった。

 この話は後述するが、ピッチ上でうずくまる、かつての仲間たちの姿を見て、さらに闘志に火をつけた戸上は、正智深谷との準決勝第2試合で大きく躍動した。

 20分にMF髙橋秀太の直接FKで先制した武南は、67分に追加点を挙げる。決めたのは戸上。右からのクロスに対し、「最初はニアに入ろうと思ったのですが、DFも対応してきたので、クロスが来るタイミングでファーサイドにずれたらよいボールが来た」と、オフの動きでマークを外すと、バックステップをしながらのヘッドだったが、バネを活かしてドンピシャで合わせてネットに突き刺した。

 試合はもう1点を追加した武南が3-0の勝利。2013年度以来となる9大会ぶりのインターハイ出場に向けて、浦和南との決勝戦に臨むことになった。
 
「もともとセンターバックだったのですが、中学3年生の時にサイズの問題もあって、右サイドバックで勝負するようになりました。高校1年生まで右サイドバックをやっていたのですが、武南には質の高いサイドバックがいるので、高校2年生でサイドハーフになり、3年生からフォワードになりました」

 戸上は壁にぶつかりながらも、ストライカーという今の地位を築き上げていった。一番苦しんだのは、進路決定をする中学3年生の時。中学2年生までは順調に来ていたが、学年が上がるにつれて一気に伸びてくる選手が周りに現われ、レベルが一気に上がったことで出番を失っていった。

「ラヴィーダのセンターバックはサイズもあるし、競り合いも強くて、かつ上手い。身体能力が高い選手が多いので、そのなかで戦っていくのは厳しいと思い、中学3年の途中でサイドバックに自分の活路を見出そうとしました。でも、ここでも周りがどんどん成長して、苦しい状況に変わりはありませんでした」

 昌平に憧れて、ここでサッカーをするためにラヴィーダに来たが、自分の現在地を知れば知るほど、「ここで目標を変えるべきではないか」と考えるようになった。最終的には「思い通りにいかない時期が続きましたが、ラヴィーダで学んだことはたくさんあったので、別の高校でその経験を活かそうと思った」と、彼は環境を変えてもう一度自分を鍛え直す道を選んだ。

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