【横浜】前田獲得の舞台裏。学、アデミウソンの後釜として白羽の矢

2015年12月30日 藤井雅彦

指揮官の好みにも合致する新進気鋭のレフティ。

スピードと突破力を兼備する前田。U-22代表候補のひとりで、ポテンシャルも申し分ない期待の21歳だ。写真:徳原隆元

 横浜が松本で株を上げた若きアタッカー・前田直輝の獲得に成功した。
 
 2015シーズン、前田は期限付き移籍で松本に所属し、31試合に出場して3得点を挙げた。チームはJ1昇格からわずか1年でのJ2降格となったが、個人レベルでは鋭いドリブル突破と精度の高い左足のシュートが、トップディビジョンでも十分に通用することを証明してみせた。
 
 前田は東京Vとの契約を残していたものの、J1でのプレーを希望していた。クラブ側は前田の意思を尊重し、早い段階から移籍を容認する構えを見せていた。新天地を模索するなかで、横浜の他にJ1の広島や仙台などが興味を示したが、そのなかでいち早く正式オファーを送った横浜が違約金を支払う形で交渉をまとめた。
 
 横浜側からすると、2列目のサイドでプレーできるアタッカーは今オフの補強ポイントのひとつだった。サンパウロから期限付き移籍で加入していたアデミウソンはチームを離れることが決定的で、齋藤学には海外移籍の噂が絶えない。チームトップの8ゴールを挙げたアデミウソン、2位の7ゴールを記録した齋藤を同時に失うという緊急事態に直面しているのだ。
 
 そこで白羽の矢が立ったのが、松本での活躍が認められてU-22日本代表にも招集されるようになった前田である。横浜とパートナーシップ契約を結ぶシティ・フットボール・グループの幹部が、U-22代表が候補合宿を行なった8月の京都合宿と10月の佐賀合宿を現地視察。そこで存在感を発揮した前田が目に留まり、早いタイミングから獲得に動き出していた。
 
 成長著しい21歳は、横浜を指揮するエリク・モンバエルツ監督の好みとも合致する。「スピーディな連動した崩し」を理想とするスタイルを指揮官は掲げており、前線の選手にはまずスピードが求められる。その一方で横浜には個人で局面を打開できる選手が不足気味で、前田には他選手と一線を画するパフォーマンスが期待できる。
 
 とはいえ、加入直後からアデミウソンや齋藤と同レベルの活躍を求めるのは酷かもしれない。トップ下に君臨する中村俊輔との呼吸を合わせ、チームに馴染むまでにそれ相応の時間が必要だろう。それでも持っているポテンシャルを考えると、即戦力として期待して当然だ。
 
 リオデジャネイロ五輪のメンバー入りを狙う意味でも、開幕から定位置を確保することは大きな意味を持つ。攻撃陣の顔ぶれが大幅に変わる可能性のある横浜でレギュラーとして活躍すれば、そのまま五輪出場への決め手になるかもしれない。
 
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)
 
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