移籍専門記者による強化部門解説|ミラン編「ガッリアーニのワンマン体制はもはや限界だ」

2015年12月31日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

「衝動買い」や「バーゲン買い」に走りがちなところに大きな限界が。

過去30年に渡ってミランの強化を仕切り、数々のビッグディールを成立させてきたガッリアーニ副会長だが、最近はネガティブな面ばかりが目立つ。OB達からもワンマン体制の限界を指摘する声が。(C)Getty Images

 アドリアーノ・ガッリアーニ副会長が予算から交渉、意思決定まで強化に関する全ての権限限を一身に担うワンマン体制は相変わらずだ。
 
 2015年夏のメルカートでは当初、48パーセントのクラブ株式取得が予定されているタイ人投資家ビー・タエチャウボルの意向を受ける形で、投資ファンド『ドイエン・スポーツ』の代表ネリオ・ルーカスがガッリアーニと行動を共にしていた。
 
 だが、ジョフレー・コンドグビア(モナコ→インテル)とジャクソン・マルティネス(ポルト→A・マドリー)の獲得に失敗したために1か月あまりで遠ざけられ、ふたたびガッリアーニのワンマン体制に戻ったという経緯があった。
 
 ガッリアーニは移籍交渉の手腕についてはトップレベルでも、一貫性のある強化戦略を立てる能力があるとは言えず、代理人などの助言に乗る形での「衝動買い」、「バーゲン買い」に走りがちなところに大きな限界がある。
 
 2015年夏もコンドグビアを取り損ねた後にアンドレア・ベルトラッチ、ジャクソンの代わりにカルロス・バッカと、まったくタイプの違うプレーヤーを獲得した事実は、その限界を象徴するものだ。
 
 唯一監督の意向に沿った戦略的な補強だったアレッシオ・ロマニョーリにしても、ボーナス込みで2500万ユーロ(約35億円)という高値を支払う結果になっており、コストパフォーマンスという点から見ても、夏の補強は不満の残るものだった。
 
 ユベントスやインテルとは異なり、育成部門の若手についても交渉と意思決定はガッリアーニが担当。スポーツディレクターのロッコ・マイオリーノ、スカウティング責任者のサルバトーレ・モナコは、あくまでもアシスタントであり、戦略や意思決定に関わる実質的な権限は何も持っていない。
 
 過去3シーズンの不本意な成績も、強化に関わる体制と戦略における限界を露呈したものだと言えるだろう。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.11.19号より加筆・修正
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。父は70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどで監督を歴任し、現在はTVコメンテーターのジャンニ・ディ・マルツィオ。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。父を通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
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