移籍専門記者による強化部門解説|マンチェスター・ユナイテッド編「ウッドワードCEOは代理人たちに“カモ”にされている」

2015年12月30日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

マルシアルに投じた金額はカバーニが買える規模だ。

スポンサー獲得などで辣腕を振るうウッドワードCEO(右端)だが、強化担当としての力量には大きな疑問符が。(C)Getty Images

 スポーツディレクターの職を置かず、エド・ウッドワードCEOがルイス・ファン・ハール監督の意向を受けながら移籍交渉と最終的な意思決定を行なう体制は、今シーズンも変わっていない。
 
 ただ、ウッドワードはサッカー畑の出身ではないため(元会計士)、スカウティング力、交渉力、決断力とそのいずれにおいても、このレベルのクラブに相応しい水準には達していない。
 
 2015年夏にしても、アントニー・マルシアル獲得に投じた額は異常だった。出来高込みの最高額で8000万ユーロ(約112億円)は明らかに過大評価であり、完全に払い過ぎ。同じくターゲットだったエディンソン・カバーニ(パリSG)を買える値段だ。
 
 補強戦略やターゲットの人選自体はファン・ハール監督とそのスタッフが担っており、今シーズンの補強は昨夏と比べれば理に適ったものだったが、ウッドワードには移籍交渉の戦略やスキルが不足しており、コストパフォーマンスが著しく低い。代理人たちに"カモ"にされていると言ってもいい。慢性化している欠点だ。
 
 これまでに大きな致命傷となっていないのは、クラブとしてのステータス、そして財力が、それをカバーしてあまりあるから。じつに幸運と言える。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.11.19号より加筆・修正
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。父は70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどで監督を歴任し、現在はTVコメンテーターのジャンニ・ディ・マルツィオ。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。父を通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事