またも昇格を逃す…初の2部降格から6季目を迎える古豪ハンブルクは復活を果たせるか【現地発】

2023年06月13日 中野吉之伴

2018年に初の2部降格

ハンブルクは勝点66を獲得するも、自動昇格を果たせなかった。(C)Getty Images

 ハンブルクはブンデスリーガにとって特別なクラブだった。リーグ創設以来、唯一2部降格がないクラブという称号が誇りだった。バイエルン・ミュンヘンは実は創設時のオリジナルチームではないし、ドルトムントも、レバークーゼンも一度は2部に落ちている。

 ハンブルクのホームスタジアムには、1部リーグがスタートした日から動いているデジタル時計があり、それは永遠に止まることはないとファンの誰もが信じていた。

 だが、世の中に永遠はないのだろう。ハンブルクも例外ではない。19985日目にそれは訪れた。2018年5月12日、時計は止まった。17位で2部への自動降格が確定してしまったのだ。

 ファンは嘆き、悲しみ、憤り、現実のことと受け入れられない。一部のファンは感情を抑えきれずに暴徒と化した。

 かつてはチャンピオンズリーグにも出場していた強豪クラブ。だが、それがおごりとなってしまったことは否めない。行き当たりばったりの運営と補強策。クラブの象徴である元ドイツ代表FWウーベ・ゼーラーは生前、「ビジネスとして売買をするのを悪いことだとは言わない。だが、ビジョンもなく、しょっちゅうしていてはだめだ。いつまでも幸運だけに頼ってはならないのだ」と嘆いていたが、結局そうした悪循環に歯止めをかけることはできなかった。

 果たして2部降格は良薬となるのか。あるいは悪い流れを変えることができずにさらに落ち込んでいってしまうのか。

 あれから5シーズンが経った。ハンブルクは2部からいまだ這い上がれずにいる。戦力的には昇格を狙えるだけのものがありながら、春先になると失速してしまう。最初の3シーズンは4位止まり。2021-22シーズンは、3位で1部16位のヘルタとの入れ替え戦に臨むと、敵地での初戦は1-0で勝利したものの、ホームでの2戦目は0-2で逆転負けを喫し、昇格できなかった。
 
 今季はこれまでの4シーズンと比べると相当コンスタントに勝点を稼ぎ、66ポイントを獲得した。例年であれば、昨季優勝したシャルケが勝点65だったように、2部で優勝できるくらいの数字だ。

 だが、今季は稀に見る接戦で、最後の最後までハイデンハイムとハンブルクがギリギリの戦いをしていた。最終節にザンドハウゼンに1-0で勝利したハンブルクに対して、同時刻に他会場でレーゲンスブルクと対戦していたハイデンハイムは2-2の引き分けで後半アディショナルタイムに入っていた。

 一度、ザンドハウゼンのスタジアムで「ハイデンハイムが引き分けた」という誤報が入ってしまい、アウェイに駆けつけていたハンブルクファンは狂喜乱舞。ところが試合はまだ終わっておらず、90+9分にハイデンハイムが決勝ゴールを挙げ、最後の最後で大逆転劇を果たしたのだ。

 今度こそ昇格だと思ったのにそれが潰え、3位としてまたしても入れ替え戦に出場しなければならなくなっただけに、その意気消沈ぶりは誰が見ても気の毒すぎるほど。対戦相手はシュツットガルト。「気持ちを切り替えて勝利を掴んでみせる」と臨んだ第1レグでは、開始45秒、CKから失点を喫してしまう。踏んだり蹴ったりだ。そのまま0-3で敗れると、ファンはもう自暴自棄にもならんばかりだ。

 ホームでの第2レグ。スタジアムへ向かう電車内では、多くのハンブルクファンが乗り込んでいた。みんな口々にいろんな話をしている。昇格の可能性は極めて低いことはファンだってわかっている。「パスミスから失点してジ・エンドかもよ」「いや、誰かが気持ち入りすぎてレッドカードになるかも」と自虐的な話をしたりもしていた。でも、スタジアムの最寄り駅について、電車から下りる時にはみんなの目に力が宿っていくのを感じた。

「やるぞ」って。
 

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