17試合でわずか13得点、横浜FCは攻撃面の課題をどう改善すべきか? 大きな鍵を握るのは“セットプレー”

2023年06月12日 垣内一之

指揮官の英断でチームは息を吹き返す

横浜FCは浦和戦で勝ちこそ逃したが、守備面では迷いのないプレーを見せていた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第17節]横浜FC 0-0 浦和/6月11日/ニッパツ三ツ沢球技場

 序盤の成績を振り返れば、失礼ながら、"奇跡"とも言える前半戦フィニッシュだろう。開幕10試合で3分7敗と危機的状況に陥りながら、その後の7試合を3勝1分3敗と持ち直し、最下位を脱出して折り返した横浜FCのことである。

 転機はもちろん、初勝利を挙げた5月3日に行なわれた第11節のホーム新潟戦(1-0)。四方田修平監督はキャンプから取り組んでいたハイプレス&ハイラインの、いわゆる"世界基準"のサッカーをきっぱりと諦め、4バックを3バックに変更し、戦術も堅守速攻に思い切って切り替えたのだ。

 もちろん、この英断には賛否両論あるだろう。ただ、忘れてならないのは、理想ばかり追い求めても、現実を直視しなければ、ときに取り返しのつかない結果を招く可能性もあるということだ。横浜FCの場合で言えば、今年の降格枠が1にもかかわらず、最下位で、1年でJ2に舞い戻る、である。

 いずれにせよ、指揮官のこの英断が奏功し、チームは息を吹き返した。0-0で終わった浦和戦でも、勝ちこそ逃したものの、守備面ではチーム全体、個々の役割はきっちり整理され、選手は迷いのないプレーを見せていたのが何より印象的だった。

 とはいえ、課題がないわけではない。言うまでもなく、前半戦の17試合でわずか13得点に終わった攻撃面である。いくら守備面が整備されたとはいえ、ゴールが奪えなければ、勝てない。浦和戦も、2シャドーの一角で、水を得た魚のように躍動する俊足の山下諒也らが完璧に抑えられるなど、決定的なチャンスはほとんど作らせてもらえなかった。
 
 では、具体的にどのような改善を施すべきか。個人的には、セットプレーが大きな鍵を握るのではないかと見ている。伸び盛りの若手が多いチームとはいえ、急激に能力がアップし、一瞬にして決定力が解消されるほど甘い世界ではない。

 そうなると、速攻の攻撃パターンはもちろんだが、CKやFKで得点を狙うプレーを増やすのも大事になるのではないか。横浜FCはもともと、CKの数が極端に少ないチーム。浦和戦も相手の9本に対して、わずか3本だった。従ってFW陣はもっと積極的に仕掛けて、セットプレーを奪うプレーも必要になってくるはずだ。

 聞くところによると、クラブは最近、セットプレーの分析に新たな人材を加え、さらに力を入れ始めたという。現役時代に名キッカーとして鳴らした中村俊輔コーチがいるのも、大きな武器だ。

「ある程度、守備を安定して、失点を減らしながらゲームを進められるようにはなってきたので、その意味ではそこから点を取るというところ、そこにもしっかりフォーカスしながら、戦っていきたいと思います」

 四方田監督は浦和戦後、後半戦へ向けた意気込みをこう語っている。

 上位争いも混戦模様なら、降格争いも最後まで熾烈な戦いが予想される今シーズン。横浜FCがどんな戦いを見せてくれるのか、どんな修正を加えてくるのか、後半戦が今から楽しみだ。

取材・文●垣内一之(スポーツニッポン新聞社)

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