移籍専門記者による強化部門解説|バイエルン編「すべてにおいてパーフェクトな世界最高の強化部門」

2015年12月29日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

価格設定は極めて適正で、最終的には交渉相手が折れるケースが少なくない。

SDのザマー(右)が責任者を務めるバイエルンの強化部門は、素早い移籍交渉に定評。2015年夏もビダル(左)らの獲得交渉を瞬く間にまとめ上げた。(C)REUTERS/AFLO

 地位と権限が明確な組織体制、一貫性のある補強戦略、そして素早い移籍交渉と、すべてにおいて世界最高の強化部門を擁しているのが、バイエルンだ。
 
 選手を売るときも買うときも、一度設定した金額で相手が交渉に応じなければ、躊躇なく手を引く。価格設定そのものは極めて適正で、最終的には交渉相手が折れるケースが少なくない。駆け引きに一切応じないドイツ的なアプローチの典型ながら、それが通用するだけの十分な経済的余裕と戦力的な厚みを持っている。
 
 2015年夏もドグラス・コスタ、アルトゥーロ・ビダル、キングスレー・コマンといった移籍交渉を、数日で一気にまとめ上げた。
 
 強化部門の責任者は取締役でスポーツディレクターのマティアス・ザマーだが、実際のオペレーションを担うのは、14年夏にレバークーゼンから引き抜いたテクニカルディレクターのミヒャエル・レシュケだ。今夏のビダル獲得は、レバークーゼン時代の07年にチリのコロコロからビダルを引き抜いたレシュケの存在があったからこそ、実現した。
 
 最終的な意思決定はザマーに委ねられているが、その下にいるレシュケが交渉のキーパーソン。このあたりの仕組みはA・マドリーやリバプールと似ている。
 
 外部アドバイザー的な役割を担っているのが、イタリア人の大物代理人ジョバンニ・ブランキーニ。以前からバイエルンの強化部門と非常に近い関係にあり、先に挙げた今夏の3人の新戦力は、すべてこのブランキーニが絡んでいた。
 
 世界随一の代理人ジョルジュ・メンデスとも懇意な間柄にある彼が主にヨーロッパのエリアを仕切り、おそらく南米についても同じような仕事を任されている代理人(残念ながら名前は把握していない)がいるはずだ。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.11.19号より加筆・修正
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。父は70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどで監督を歴任し、現在はTVコメンテーターのジャンニ・ディ・マルツィオ。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。父を通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
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