【指揮官コラム】特別編 三浦泰年の『情熱地泰』|「攻撃」から見るか、「守備」から見るか。見る角度を変えれば…

2015年12月25日 サッカーダイジェスト編集部

チャンピオンシップ準決勝の浦和対G大阪戦から「組織」について考える。

Jリーグチャンピオンシップの準決勝・浦和対G大阪は、1-1で延長戦にもつれ込み、G大阪が制した。終盤は劣勢だったがG大阪が粘り強く凌ぎ、勝負どころでしたたかさを発揮した。(C) SOCCER DIGEST

 プロサッカーの世界において「組織」とは、どの部分を指すのだろうか? そして「組織的に戦う」とはいかなる意味を持つのか。少し前の話だが、Jリーグチャンピオンシップの試合を見て、そんなことを考えさせられた。
 
 その試合とは、埼玉スタジアムで観戦した浦和レッズ対ガンバ大阪。ご存じのとおり、この試合は年間3位のガンバが、ファーストステージで優勝した年間2位のレッズを下して、サンフレッチェ広島との決勝戦に駒を進めた。
 
 そして、この試合後、僕はスタジアム内で仕事をしていた知人と携帯電話で言葉を交わす機会があった。会話はもちろん、ゲーム内容についてだったが、僕は知人のあるひと言がすごくきになってしまった。
 
「やっぱり、ガンバのほうが組織的だから…」
「レッズは個だから…」
 そう語っていたのだ。 僕は「う~~ん」と言って電話を切ったが、少し意味を考えてみた。
 
 この試合はレッズが90分間で試合を決められるチャンスを逃し、逆に延長戦でガンバにゴールを許し決着をつけられた。数多くの攻撃パターンで決めに行ったレッズが決め切れず、延長戦に持ち込まれると、最終的には勝負どころでガンバのしたたかさが上回った。追加点も奪われ、結局は1-3というスコアに終わった。
 
 試合展開としては、GKも含めて後方からビルドアップしていくレッズのパスサッカーに対して、ガンバは効率良くボールを奪い、精度の高いカウンターで迎え撃つ。ガンバの先制点はそのレッズのリズムとテンポの出ないつなぎをカットしてショートカウンターから今野のゴールにつなげたものだった。
 
 一方のレッズは横のつなぎと縦へのくさびを上手く組み合わせながらフリックも多用して攻撃にキレを出していく。後半途中からは完全にレッズのペースとなって、CKから追いついた。
 
 試合としてはガンバの精度の高い効果的なサッカーと、攻撃に特徴を持つレッズのアイデアとイマジネーションを感じる良い試合だった。
 
 そこから感じ取れる「組織的」とは?
 
 率直に言えば、僕はレッズのほうが組織的だった、と思っていた。攻守によく鍛えられている、練習していると思って見ていた。
 
 おそらく、今のガンバが「組織的だ」と感じるなら、それはディフェンスの構築のことを指すのだろう。きっと知人に限らず、日本のサッカーファンの多くは、感覚的に「組織」と言えば、「攻撃」ではなく「守備」を語る際に使う言葉だと考えてはいないだろうか。僕は決して「組織」とは守備にのみ、当てはまる言葉だとは思わない。
 
 そして、まさしく物事を見る観点、角度によって、人の見方は違うものだなと痛感したのである。
 

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