松木玖生の凄さは勝負強さだけにあらず。フィニッシャーとクローザーを兼務。大舞台で示したサッカーIQの高さ【U-20W杯】

2023年05月22日 松尾祐希

自らの判断でセカンドボールを回収に

「先制点取りますよ」。有言実行の一撃でチームを勝利に導いた松木。(C)Getty Images

[U-20W杯]日本 1-0 セネガル/5月21日/ラ・プラタ・スタジアム

 試合前日、MF松木玖生はこんなセリフを口にしていた。

「先制点取りますよ」

 囲み取材の去り際に「任せてください」と言わんばかりの表情を見せ、何かやってくれそうな雰囲気を漂わせていた。

 現地5月21日に行なわれたU-20ワールドカップの初戦。セネガルに対し、日本は立ち上がりから苦戦を強いられた。パワーとスピードは圧倒的で、個人のスキルでも相手が一枚上手。そんな嫌なムードを一掃したのが、松木だ。

 15分にペナルティエリア手前で福井太智からパスを受けると、一瞬の隙を見逃さなかった。ワンタッチで前を向き、相手が寄せ切る前に左足を振り抜く。地を這うようなシュートが右サイドネットに突き刺さり、有言実行の一撃を叩き込んだ。
【動画】左足一閃! 松木玖生のゴラッソ!
「大舞台に強いのが自分」

 試合後、涼しい顔で言い切ったが、やはり頼りになる男だった。

 思い返せば、青森山田高時代も大事な場面でゴールを奪うのは松木だった。プロに入ってからも、勝負強さは変わらない。ルーキーイヤーの2021年10月のU-23アジアカップ予選では飛び級での選出ながら、初戦のカンボジア戦で先制点を奪って勝利に貢献している。

「自分の武器はメンタルの強さ」

 本人が何度も口にしてきた通り、ここぞという場面で結果を残せるメンタリティは流石だった。
 
 ただ、松木の凄さは先制点を奪ったプレーだけではない。セネガル戦の後半。終盤に自らの判断で位置取りを変えたのだ。70分過ぎに日本は4-2-3-1から4-3-3に移行。松木のポジションもトップ下からインサイドハーフになった。

 チームの狙いはパスの出所を封じ、相手の自由を奪うこと。しかし、80分以降は長いボールを放り込まれてしまう。なんとか自陣で跳ね返していたが、どうしてもセカンドボールが拾えない。

 松木は試合の状況を見極め、ある決断を下す。最終ラインに近い位置に降り、こぼれ球を回収する役割を担ったのだ。その狙いについて、松木は言う。

「個人的にはもっと前で行きたかったけど、セカンドボールが拾えていなかった。あと、クロスの時に(田中)隼人と(チェイス・)アンリのセンターバックコンビのうち、アンリだけが下がっていた。間にいる人がいなかったので、そのスペースを自分が埋めようと思って、そういうシーンを作りました」

 放り込まれたあとに出足の鋭さを見せ、ことごとくボールを回収していく。もちろん、危ないシーンは一度や二度ではなかったが、流れを読む"眼"を発揮してゲームをクローズさせた。

 相手の雑なプレーに助けられた側面もあるが、チームは最後まで無失点で勝点3を掴んだ。1つのゲームでフィニッシャーとクローズさせる役割をこなした松木の存在感は唯一無二で、サッカーIQの高さには目を見張った。

 グループステージ突破に向けて一歩前進したが、松木の視線はすでに次のコロンビア戦に向いている。

「全員が90分間を戦い抜いて掴んだ勝利。今日だけはしっかり喜んで、明日からは次の試合に向けて、コンディションを整えていきたい」

 一喜一憂しない。ブレない"心"があるからこそ、大舞台でも怯まずプレーができるのだろう。日本を背負う松木のプレーに次戦も期待したい。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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