「強豪相手だと無駄に走ってしまう」今季6点目を挙げた斉藤光毅の“フルタイム出場”に見る確かな進化「学ばないと上に行けない」【現地発】

2023年05月22日 中田徹

鮮やかな同点ゴールでスパルタに勢いをもたらす

地元サポーターの前で満面の笑みを浮かべる斉藤。キャリア最多タイの6点目をマークした。(C)Getty Images

 5月21日、オランダ・リーグ1部のスパルタはカンブールを4-1で下し、最終節を待たずに6位が確定した。一方、最下位のカンブールはすでに2部降格が決まっている。

 9分、カンブールに先制ゴールを許したスパルタは、24分になってようやく最初のシュートを放つなど、なかなか攻撃の形が作れない。左ウイングの斉藤光毅も自慢のドリブルを封じ込まれていた。しかし、斉藤の動きには切れがあり、決して調子が悪いわけでもなさそうだった。こうして迎えた前半30分、CFラウリツェンが丁寧に落としたボールを、斉藤が左45度の位置からファーサイドに正確なシュートを蹴り入れ、試合を1-1のタイスコアとする。

 この斉藤の同点弾によってスパルタに勢いが生まれ、前半38分には左SBピントが強烈なボレーを叩き込んで勝ち越しに成功。さらに前半42分にMFキトラノ、後半5分にはMFナムリが畳み掛けるように得点を重ね、カンブールを一気に突き放した。

 ゴールを決めてからドリブルに冴えを取り戻した斉藤は、マン・オブ・ザ・マッチに選出された。「1点取れたのは良かったです。でもあと何点か取れましたね」と試合後の斉藤は語った。

 斉藤のこの日の立ち上がりを振り返ってみよう。

 元U-23日本代表、ファン・ウェルメスケルケン際とマッチアップし、さらに二重三重のマークを受けた。この包囲網に斉藤は手こずり、いい形でボールを持っても突破できない。そんな斉藤は、パスでリズムを取り戻す。22分にはハーフウェーライン辺りまで引いてから、ミドルレンジのスルーパスをFWファン・クローイにズバリと通した。27分、今度はショートレンジのスルーパスをCFラウリツェンに届けた。ゴールを決めた直後の33分には軽やかなトラップ&パスでSBピントのオーバーラップを助け、34分には際のファウルを誘った。

「パスを使いながらリズムを取れたのは良かった。最初はちょっとドリブルでどうするのか迷っちゃいました。シュートを打とうとすると、相手は動くものなんです。だけど、カンブールの選手は動かなかった。それでバタバタしてしまった」
 
 ペナルティエリアの左角近辺は、斉藤にとってカットインシュートの見せ場だ。しかし、カンブール戦ではカットインの素振りをしながら斉藤が相手DFと睨み合い、しばらくボールを動かせないまま、ようやくバックパスを出したシーンがあった。

「そうです。そういうのがあったのでリズムが取れなかったんです。でも点を取ってから変な感じがなくなり、自分のペースでできました」

 後半の斉藤にはちょっとした隠れたファインプレーがあった。スパルタのCBがビルドアップのパスをブロックされてしまって、ボールが自陣ゴール近くのスペースに転がってしまった。これをカバーしたのが斉藤だった。なぜ、彼が自チーム最後方のビルドアップのミスに対してカバーする位置にいたのだろうか? 「俺もなんで自分があの位置にいたのか分かりません」と答えてから続けた。

「落ち着いてプレーして、その後もパスをもらって大きく蹴らずにつなげて良かったです。考え続けながらプレーできました」

 この日、76分間に渡り激しい攻防を繰り広げたファン・ウェルメスケルケン際については、「際くんはやっぱり上手いですよね。彼を追っかけようとしても、逆を取られてしまうので(自分が守備をしても)ハマりませんでした」と唸った。

次ページ6位が確定。いざ、プレーオフのシビれる戦いへ

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