【クラブW杯】「最高の1年の締めくくりになった」。“小さくて大きな守備職人”マスチェラーノが、日本人DFに伝えたメッセージとは?

2015年12月21日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

情熱と冷静さを、パーフェクトにコントロール。“あのプレー”を境に、バルサはリズムを掴んだ。

サンチェスとのボールの奪い合いで、マスチェラーノは激しいチャージを見舞った。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

「これ以上ないぐらい最高の1年の締めくくりになった。今日は自分たちのスタイルを明確に打ち出して勝てたからね。今、FCバルセロナが歩んでいる道を、このまま進んでいきたい」
 
 マスチェラーノは優勝を決めた直後、安堵したように語った。なにか自分自身に対する責任を果たしたかのように。
「古巣との戦いは、よくあること。サッカー人生の一部。決勝は勝つことだけが求められる」
 
 下部組織時代の14歳から21歳までプレーした古巣リーベルに勝っての世界一。2015年12月20日は、間違いなくこのアルゼンチン人の"守備職人"にとって特別な一日になった。
 
 2試合連続CBとして先発した背番号14は、情熱と冷静さ、そのふたつをパーフェクトにコントロールしていた。序盤はバルサの最終ラインからのビルドアップを自由にさせまいとするリーベルの組織的なプレスに苦しんだ。それでもマスチェラーノはひるまない。振り返ってみると、"あのプレー"を境に、バルサはリズムを掴んだ。
 
 28分、左サイドをカルロス・サンチェスが抜け出す。瞬時にマスチェラーノは、全速力でそこへ詰めて強烈なタックルを見舞った。
 
 突破されていれば致命的なピンチになりかねない場面、躊躇わずボールへ襲い掛かり、微妙な判定でファウルをとられたものの、プレーを寸断し、相手が一段と調子に乗りそうだった気配を木端微塵に潰した。
 
 そして36分、メッシのゴールが決まった。
 
 40分に見せたプレーも、試合にアクセントを加えた。最終ラインでパスを回していたマスチェラーノは前にスペースができると、自らボールを持ち出してハーフウェーラインを過ぎたあたりまで駆け上がったのだ。ボランチとして長年キャリアを積んできただけに攻撃の機転も利き、左サイドに展開してチャンスを演出。精神的に大きなダメージを受けていた相手に揺さぶりをかけた。実際、リーベルのプレスが、このあたりからどの位置でかけるのか曖昧になっていった。
 
 後半も、交代出場したリーベルの若手らにしっかり対応。危うい場面があれば、ゲキを飛ばして引き締めた。
 
 そして81分、大観衆の拍手を受けて、ベンチに退いた。申し分ないパフォーマンスを見せた男に対し、熱烈な声援を送り続けていたリーベルの一部のサポーターからも拍手が送られていた。交代時がブーイング一色だったネイマールとは対照的だった。
 
 アディショナルタイムを経て、バルセロナの優勝を告げる主審の笛が鳴ると、マスチェラーノはベンチを飛び出して歓喜の雄叫びを上げ、真っ先に古巣のリーベルのベンチに向かい、マルセロ・ガジャルド監督とクラブの英雄でもあるエンソ・フランチェスコリSD(スポーツディレクター)と健闘の抱擁を交した。

【PHOTOハイライト】リーベル 0-3 バルセロナ 
 

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