【クラブW杯|取材記者の視点】3ゴールを奪ったのはさすがだが、決勝に向けて不安も

2015年12月17日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

マスチェラーノが個の能力で止めるも抜けていれば1点もののシーンも…。

先制点を引き出したボールキープ、2点目のアシストをはじめ、イニエスタは攻撃の起点となり続けた。メッシ、ネイマールが欠場するなか、勝利の原動力に。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 左内転筋の怪我を抱えて来日したネイマールに続き、内臓疾患でメッシも急遽欠場。バルセロナ自慢の"MSNトリオ"のうち、先発したのは"S"のスアレスだけだった。
 
 序盤からボールポゼッションで圧倒し、完全に試合を支配しながらも、39分までゴールを奪えなかったのは、この両翼の欠場の影響をモロに受けたからだ。
 
 最後の30メートルまでボールを運ぶも、4DF+4MFの2ラインで分厚い壁を敷いてきた広州恒大のディフェンスラインを崩しきれず停滞。いつもなら"M"のメッシと"N"のネイマールが1人、2人を軽く剥がし、チャンスを切り開いている局面だ。
 
 メッシに代わって右サイドに入ったムニルは、DFとMFの2ライン間でボールを受けようと試みるもなかなか前を向かせてもらえず、ネイマールの代役として未経験の左サイドに配置された本来MFのS・ロベルトは崩しの局面でほとんど仕事ができなかった。
 
 23分にムニルがGKと1対1になった最初のビッグチャンス、28分のD・アウベスの飛び出し、32分のムニルの惜しいヘディングシュートと、先制するまでの決定機はいずれもイニエスタを起点に生まれている。逆に言えばイニエスタ、そして2ライン間でのキープや反転で敵を苦しめたスアレスが絡まない攻撃は、ほとんどがシュートに繋がるようなシーンが作れていなかった。
 
 GKが弾いたボールをスアレスが押し込んだ39分の1点目はイニエスタのボールキープ、ここまでの今大会ベストゴールと言えほどスペクタクルだった50分の2点目はスアレスとイニエスタの見事な"縦のワンツー"が、決定的な違いになっていた。
 
 守備で問題だったのは、いわゆるネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)だ。とくに前半はそれが顕著で、いずれも中盤のパスをカットされ、12分にエウケソン、29分にジョン・ジーにカウンターアタックを許した。ともにマスチェラーノが個の能力で止めたとはいえ、抜けていれば1点ものの危ないシーンだった。
 
 もちろん戦前の予想通り、圧倒的な個のクオリティ差で広州恒大を蹴散らし、しっかり3ゴールを奪ったのはさすがと言っていいだろう。
 
 とはいえ、決勝の相手は個としても組織としても広州恒大より数段上のリーベルだ。攻撃がイニエスタとスアレス頼みで、さらに守備では易々とカウンターを許したこの日のようなパフォーマンスでは、思わぬ苦戦を強いられても、なんら不思議はない。

【PHOTOハイライト】バルセロナ 3-0 広州恒大
 
取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)
 
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