【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る Vol.22~2012-13シーズン ~

2015年12月16日 サッカーダイジェストWeb編集部

後半戦で問題が噴出したものの、新体制1年目でリーガを制覇。

リーガ優勝パレードでのメッシ。ひとり別次元で進化を遂げた彼の存在自体が、もはやバルサにとっての戦術だった。 (C) Getty Images

 バルサの歴史に残る黄金時代を創成したジョゼップ・グアルディオラが監督の座を退き、彼の下でアシスタントコーチを務めたティト・ビラノバが昇格。新たな時代に向かって歩み始めたチームの舵取りを任されることとなった。
 
 即戦力の補強は新指揮官が要求した左SB(ジョルディ・アルバ)、CBとMFをこなせるマルチロール(アレックス・ソング)に止まり、前任者が創り上げたポゼッション重視の攻撃サッカーを引き継ぎ、さらなる進化を狙った。
 
 そして始まったリーガでは、開幕6連勝という好スタートを切る。6節のセビージャ戦では敵地で2点をリードされながらアディショナルタイムで逆転勝利を挙げるなど、さらなる勢いを得て、首位を快走した。
 
 7節のクラシコを2-2で引き分けた後、そこから再び連勝街道を走り、数字を12まで伸ばしたバルサ。そのなかで驚異的なゴールラッシュを見せたのがリオネル・メッシだ。前半戦を終える時点で、すでに28ゴールを挙げていた。
 
 前シーズンに50得点という大記録を成し遂げ、さらに2012年の年間得点数91がゲルト・ミュラーの記録(85)を40年ぶりに更新したメッシは、この年で4年連続のバロンドール受賞(これも新記録)を果たすなど、もはや完全に別次元の存在だった。
 
 このシーズン、11節から出場した21試合全てでゴールを決めるというリーガ新記録を達成。そして最終得点数は46で(怪我がなければ2年連続の50超えは可能だっただろう)、2シーズン連続で得点王に輝くこととなる。
 
 当然、バルサでも彼はアンタッチャブルな存在であり、ビラノバ体制でもメッシを活かすためのサッカーが展開されることになったが、そこから前体制でもそうだったように、徐々にメッシ依存の様相を強くしていく。彼が欠場すれば一気にチーム力は低下。セスク・ファブレガスの"偽9番"では、相手に脅威を与えることはできなかった。
 
 またビラノバ監督は、ダビド・ビジャが欠場中はアンドレス・イニエスタ、セスク、シャビ、セルヒオ・ブスケッツの4人を同時にピッチに並べることが多かったが、バルサは前線からの守備が弱まり、徐々に最終ラインに負担がかかるようになる。後半戦になると、守備陣は疲弊し、相手に完全フリーでのシュートを許す場面も増えていった。
 
 カンテラ出身選手が思ったほど成長せず、選手層に厚みを加えられないなど、問題も多く噴出したバルサだが、それでもリーガでは2位の宿敵レアル・マドリーに勝点15もの差をつけて2シーズンぶりの栄冠を手にした。
 
 一方、チャンピオンズ・リーグ、国王杯ではともに準決勝で力尽き、とりわけ前者はバイエルンに2試合合計0-7で敗れ去るなど、ここからも後半戦での息切れ感が窺えた。
 
 就任1年目で何とかリーガというタイトルの奪還に成功したビラノバ監督だが、11年にも手術した唾液腺に再び悪性腫瘍がシーズン中に見つかり、放射線治療のためにリーガ17節、21~29節で指揮をアシスタントのジョルディ・ロウラに任せることを余儀なくされた。
 
 このことも、チームマネジメントがうまく機能しなかったという意味で、バルサが苦労する要因のひとつとなった。
 
 治療を終えてベンチに戻って来たビラノバは、翌シーズンのチームの指揮にも意欲を見せ、上層部も続投を明言していたが、病魔がそれを邪魔することとなる……。
◎2012-13シーズン成績
リーガ:優勝(32勝4分け2敗・115得点40失点)
国王杯:準決勝敗退(対レアル・マドリー)
チャンピオンズ・リーグ:準決勝敗退(対バイエルン)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):メッシ(46点)、セスク(11点)、ビジャ(10点)、A・サンチェス(8点)、ペドロ(7点)、テージョ(7点)、シャビ(5点)、アドリアーノ(5点)、イニエスタ(3点)、チアゴ(2点)、ピケ(2点)、ジョルディ(2点)、ブスケッツ(1点)、ソング(1点)、プジョール(1点)、モントーヤ(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

DF ジョルディ(←バレンシア)
MF ソング(←アーセナル)
◇OUT

MF ケイタ(→大連)
MF アフェライ(→シャルケ)

FW クエンカ(→アヤックス)
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