“分析家”渡邊凌磨の見解。ゴールへの鍵は「アバウトなボール」【FC東京】

2023年05月04日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

FC東京が昨季から進化した点は…

渡邊の分析は興味深い内容だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 4月29日の新潟戦の会見で、アルベル監督にこう質問した。「今日の試合、2ゴールとも起点になったのは渡邊凌磨選手でした。彼のプレーをどう評価していますか」と。すると監督は迷わず「我々のサッカーで最も重要な選手」と答えた。

 アルベル監督が標榜するポゼッションサッカーをおそらく一番理解しているのが渡邊であり、実際、本人は「監督のやりたいことは100パーセント話を聞かなくても、意図は伝わってくる」とコメントしている。

「アルベル監督にしたらまだ(僕のプレーは)物足りないかもしれないけど、意図は理解しています。監督が思い描くプレースタイルに近づけば近づくほど、自分は成長できると確信しています」

 FC東京が昨季から進化した点を訊いても、渡邊はスラスラと答える。

「相手のゴールに向かうスピードが早くなったかなと。ボールを奪った後、昨季よりもスピーディにゴールへという意識が高くなっていると感じています」

 そもそも賢いのだろう。「今のFC東京には怖さが足りないのでは?」と質問しても考え込まずによどみなく言葉が出てくるところからも、渡邊のインテリジェンスは感じる。

「僕の分析では、チームがボールを回せているときはなかなか点が取れない。怖さや大胆さを出すには、良い意味での思い切りが必要でしょう。事実、相手に取られてもいいやというアバウトなボールがゴールに直結するケースはよくあります。例えば、(今季7節の)湘南戦も防戦一方の局面でリードしたりとか、後半に入ってボールが回り始めたら失点するとか、そういうことが起きています。ディエゴ(・オリヴェイラ)やアダイウトンへのラストパスは、取られてもいいスタンスで出すべきとの感覚はありますね。それで相手とフィフティフィフティの状況を作れれば、チャンスになる可能性はあるので。僕を含めてですが、今はボールを大事にしすぎている部分があるかもしれません」

 的確な分析である。自分のプレーも客観視できる渡邊がそうやってサッカーを分析するようになったのは「中学2年生の頃」だという。「分析するのは当たり前。分析しなかったらどうやって上手くなるんだろう」と考えているそうだ。
 
 ただ、自身の考えを押し付けたりはしない。

「かつて自分の感覚で『あれをやってほしい、これをやってほしい』と言ったことがあって。ただ、そうなると難しい部分があって、要求された選手は持ち味を出しにくくなる。もちろん、誰にでもできることは要求しますけど、その選手の技術的な持ち味が消えるようなことはしません」

 そんなスタンスの渡邊がプレーでアピールしたいのは「90分の間、高いインテンシティを保ったうえでのポジショニングや技術」。「そこを見てもらえると、チームへの貢献度がわかってもらえると思います」と彼は力強く話していた。

 チームへの貢献を示すために、もうひとつ、渡邊が意識しているのは「シュートだ」。

「攻撃を活性化させる意味でチームとしてシュートをどんどん打っていくことが大事です。そうすれば、相手の警戒の仕方も変わってくるはずなので。シュートが増えればチャンスも増えるので、その意識はポイントになります」

 プロフットボーラーにして分析にも長けている渡部の言葉には、十分な説得力があった。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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