【クラブW杯】広島はいかにして「ブラック・アフリカン」の身体能力に対抗したのか?

2015年12月13日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

相手の身体能力に対し、持ち前の連動性で対抗した広島。

前半はマゼンベの身体能力を活かした攻めに苦しんだ広島だが、CKから塩谷が先制点を挙げる。体格で上回る相手の隙を突く攻撃が突破口を開いた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 ほぼノーステップでシュートやパスを放てるほどのバネ、多少の当たりではビクともしないパワー、そして打点の高いジャンプやトップスピードを生む脚力――。12月13日のクラブワールドカップ準々決勝、サンフレッチェ広島はマゼンベの圧倒的な身体能力と対峙した。
 
 アフリカ王者のマゼンベは母国のDRコンゴをはじめ、コートジボワール、ザンビア、マリ、そしてガーナと全員が"ブラック・アフリカン"。広島の面々は、アフリカ人選手の少ないJリーグでは体感しえない圧力を感じていたはずだ。
 
 フィジカルがモノを言う状況が頻繁に起こるような真っ向勝負を挑んでは、勝利を手繰り寄せるのは難しい。実際、1対1の場面では、試合開始からずっと苦戦を強いられていた。
 
 それでも広島は、3-0というスコアが物語る通り、マゼンベを圧倒した。攻守でポイントとなったのは、持ち前の"連動性"だ。守備では個々が精いっぱいに踏ん張り、さらに1人がダメなら2人、2人がダメなら3人と、次々にアグレッシブな寄せを敢行。攻撃では一方のサイドで細かいパスを繋いだ後、スペースが生まれた中央と逆サイドに素早く展開する意識を徹底した。いずれも普段のJリーグで見せる広島らしいスタイルだった。
 
 また、いずれもコーナーキックから生まれた1点目と2点目は、前者はニアでフリックしてアシスト役となった佐々木、後者はスコアラーとなった千葉が敵よりも先んじてボールに触っていた。いずれもまともに勝負していれば、敵の圧倒的なフィジカルに敗れていたかもしれない。ポジショニングの妙と言えるだろう。
 
「わざとなのかトラップミスなのか分からないですけど、ボールの置き所が日本人とは違くて、取りにくい部分はあった。個人能力の部分では日本人より高いと思います。ただ、ボールの動かし方や連動性はそこまで脅威に思わなかった」(千葉)
 
「なかなか体感できないフィジカルの強さと激しさだった。Jリーグでは止まるような場面でも、そのままの勢いで倒してきますしね。もうズタボロです(苦笑)」(佐藤)
 
「いつもとは違った身体能力だった。でも、その中でいつもの自分たちのサッカーができた」(柏)
 
 試合後に選手たちがそう語った通り、"ブラック・アフリカン"の身体能力はやはり驚異的だった。その差を"連動性"でカバーするどころか上回り、見事な勝利に繋げた広島の戦いぶりは、激賞に値する。
 
取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

【PHOTOギャラリー】広島 3-0 マゼンベ
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