「タケは怒った顔をしていた」“怒り”の久保建英、決勝点演出の3人突破を番記者が絶賛!「魔法のタッチ」「間違いなくMVP」【現地発】

2023年04月26日 ミケル・レカルデ

「何もないところからチャンスを作れる選手」

先発落ちをしたラージョ戦で決勝ゴールを演出する圧巻のドリブルを披露した久保。(C)Getty Images

 フットボールでは、全ての選手がスーパーヒーローのマントを身に着けているわけではない。主人公が必ずしも一面を飾っている選手とは限らない。有利なのは、ゴールに近いところに住む者、つまりFWだ。

 レアル・ソシエダ対ラージョ・バジェカーノ戦(2-1)では同点ゴールを叩き込んだアレクサンダー・セルロトと2アシストを記録したアイヘン・ムニョスが英雄扱いを受けるのが通常だ。一方、脇役にとどまったタケ・クボ(久保建英)が後年この試合で何をしたか語られることはほとんどないだろう。しかし私の意見はその逆だ。

 62分に途中投入されると、タケは独特のぷんと怒った顔をしていた。スタメンから外されたことが闘志に火をつけていただろうことは想像に難くない。イマノル・アルグアシル監督は、56分に先制を許すと、急遽タケを呼んだ。セルロトが同点弾を決めたのは、指示を与えていた最中だった。タケに課された使命は、持ち前のドリブルで攻撃に推進力をもたらすことだった。

 流れは同点に追いついたソシエダにあったが、ラージョの守備も堅かった。実際、試合は再び膠着状態に陥り、両チームともなかなか決定機を作れない時間が続いた。そんな中、何もないところからチャンスを作れる選手がいれば、グッと有利になる。タケのことだ。
 
 セルロトのヘディングによる同点ゴールでもなく、アイヘン・ムニョスの2本のクロスでもない。わたしがこの一戦における勝敗を分けたプレーは、逆転弾の起点となったタケのドリブルと主張する所以でもある。

 しかもイゴール・スベルディアから送り込まれたパスはグラウンダーで、コントロールしづらいものだった。しかしタケはそれを逆手に取って、来シーズン、レアル・マドリーへの復帰が取り沙汰されているフラン・ガルシアを越える魔法のワンタッチで抜き去ってしまった。

 さらに間髪入れずに華麗なボールタッチで1人、また1人をかわすと、マルティン・ズビメンディにボールを預けた。この時点でアイヘンとモハメド=アリ・ショが陣取る左サイドにはスペースが広がっていた。スビメンディがすかさず展開すると、ショとパス交換したムニョスがクロスを配給。カルロス・フェルナンデスがヘッドで合わせ、フロリアン・ルジューヌのオウンゴールを呼び込んだ。

 多くのファンは、わたしがいくら主張してもピンと来ないかもしれないが、この一戦でのMVPは間違いなくタケだった。負けず嫌いの彼のことだ。先発落ちの悔しさはそう簡単には晴れないだろう。 "怒りモード"のタケには注意したほうがいい。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

【動画】決勝点を演出!ラージョの3人包囲網を突破した久保のキレキレドリブル

【PHOTO】日本代表を応援する麗しき「美女サポーター」たちを一挙紹介!

次ページ【動画】3人の包囲網を突破した久保のドリブル

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事