【高円宮杯チャンピオンシップ展望】WEST王者・G大阪ユースが連敗、大量失点を機に備えた勝負強さを発揮するか?

2015年12月12日 森田将義

8月末の連敗、計7失点を機に守備意識の改善に取り組んだ。

WEST初制覇を決めたG大阪。8月に喫した大量失点での連敗が転機となり、守備意識の向上につながったことが優勝の要因に。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 高円宮杯U-18サッカーリーグのチャンピオンシップが12月12日に埼玉スタジアム2002で開催される。東西チャンピオンが激突し、今年の高校・ユース年代の日本一を決める大一番だが、ここでは今季のプレミアリーグWESTの戦いを振り返るとともに、西の王者・G大阪ユースの強さを紐解く。

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 G大阪ユースが関西の他の強豪Jアカデミーに一歩遅れてプレミアリーグWESTに参入したのは2013年。初年度は、怪我人の影響で残留争いを余儀なくされたが、昨年度は優勝争いを牽引し、2位でフィニッシュ。3度目の正直を誓った今季は、終わってみれば2位の東福岡高に勝点差7をつけて、頂点に立った。
 
 だが、梅津博徳監督が「苦しい1年だった」と口にしたように、数字とは裏腹に決して楽なシーズンではなかった。まず、前期を首位で折り返したのは、昨年の王者・C大阪U-18だった。6-1で東福岡を下した開幕戦を皮切りに、開幕から勝点を積み上げたものの、前期は大分U-18とG大阪ユースの上位勢から白星を奪えず。大熊裕司監督は「今年は優勝するチームのメンタリティではない」と手厳しい言葉を口にした。特に、第9節に行ったG大阪とのダービーで喫した0-4での大敗が痛手だったのは間違いない。
 
 徐々に勢いを失ったC大阪同様、G大阪も上位争いに加わるものの取りこぼしが多く、シーズン途中まで優勝できるチームだったとは言い難い。だが、結果が出なかったことが、チームの上昇するきっかけとなったのは間違いない。
 
  選手たちが転機として声を揃えるのが、8月末に許した2連敗。DF初瀬亮が「無失点に抑えれば、負けはない。練習や紅白戦から、失点の重みをより強く意識した」と振り返ったように、2試合で7失点を許した守備の意識向上が優勝の要因となった。
 
 守備の改善は、怪我人の復帰により、ディフェンスラインの並びを固定できたこともチームとして大きい。とりわけ松岡秀平と吉岡裕貴をCBに固定できた影響は絶大で、粘り強い守りによって守備が安定。加えて、後方でのボール回しが向上したことで、落ち着いた試合運びが可能となった。負けなしを維持した第13節の履正社高からの6試合で16得点・2失点という成績を残せたのはDF陣抜きでは語れない。
 
 攻撃陣の意識変化が伺えたのもこの頃から。以前はG大阪らしい"遊び心"を重視し、相手を崩し切っての得点に拘ったが、連敗を機に確実にゴールを射止める意識が高まった。中でも目を惹くのは先制点の早さ。第14節の京都橘高からの3試合は開始から10分以内に相手のゴールネットを揺らしている。加えて、1点で終わるのではなく、確実に2点目を奪って、試合の大勢を決めているのも特徴だ。
 
 元々、トップ昇格が決まったDF初瀬亮、MF市丸瑞希、FW高木彰人などJr.ユース出身者は中学時代に全国3冠を達成するなど技術力には定評がある選手ばかり。彼らに屈強なフィジカルを持つFW武田太一、縦への推進力を備えたDF山中海斗などG大阪らしさとは違う個性を持った選手が加わり、個の力は十分にあるチームだった。遠回りしながらも、勝利に対する欲望や、確実に勝負を決める戦い方を身につけた彼らが、頂点に立ったのは必然だったのかもしれない。
 
「最後は優勝で終えたい」と口にする初瀬を始め、選手たちは皆、タイトルに飢えている。チャンピオンシップでは、3年間の想いと共に成長した姿を見せてくれるはずだ。
 
取材・文:森田将義(サッカーライター)
 
 
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