「雰囲気を変えられる選手に」パリ五輪エース候補の斉藤光毅、伝統のロッテルダムダービーで示した成長の跡

2023年04月03日 松尾祐希

連係、オフ・ザ・ボールの質ともに向上

オランダで確実にレベルアップしている斉藤。(C)Getty Images

[エールディヴィジ第27節] スパルタ1-3フェイエノールト/4月2日/スパルタ・スタディオン

 パリ五輪のエース候補にとって、悔しい敗戦となった。

 試合が始まる前から凄まじい熱気だった。オランダ最古のクラブであるスパルタにとって、4月1日はクラブ創立135年目の記念日。しかも、翌日に行なわれるゲームが首位を走るフェイエノールトとのロッテルダムダービーとなれば、スタジアムには入り切れないほどの観衆が集まった。

 そんな伝統の一戦に斉藤光毅は4−2−3−1の左サイドハーフで先発出場。先週に行なわれたU-22日本代表の欧州遠征は、コンディション不良で招集辞退となったが、快復ぶりをアピールし、立ち上がりからアグレッシブなプレーで攻撃を活性化させる。

 オフ・ザ・ボールの動きで何度も裏抜けにトライし、積極的にゴールへ向かう。前半途中には左サイドから中央にカットインし、右足で惜しいシュートを見舞った。チームは12分に先制点を許したものの、粘り強く戦って33分に追いつく。前半終了間際に獲得したPKを決めていれば、言うことなしの前半だった。

 だが、この日のスパルタは後半にペースダウン。首位チームに対し、後手を踏んで徐々に自陣で守る時間が増えていく。最終的に2失点を喫し、斉藤も時間の経過とともに前線で孤立。挽回できず、1−3で敗れた。

 試合後、斉藤は悔しさを滲ませた。たしかに序盤は精力的に動き、何度もボールを引き出した一方で、後半は沈黙。「自分のなかで満足していない。チームとしても負けているし、仕掛けるシーンもそんなに多くなかった」という言葉からも、この日のパフォーマンスに納得していない様子が窺える。

 本人が言うように、「チーム全体として蹴ることが多くなった。そのなかでセカンドボールが拾えなくなり、難しいゲームになった」のは否めない。特に、後半は自分の良さを出し切れなかった。相手に押し込まれた展開で、いかに力を発揮できるか。だからこそ、斉藤はこう話す。
 
「雰囲気を変えられる選手にならないといけないし、オランダリーグでそういう存在になりたい」

 悔しさは残る。しかし、昨年と比べると、明らかに状態は良い。2022年6月のU-23アジアカップでは、オフ明けでコンディションが上がり切らず、主軸として期待されたが、思うような活躍は果たせなかった。夏に加わったスパルタでも序盤は出番を得られずに苦しみ、9月に行なわれたU-22代表の欧州遠征でも本調子とは言えなかった。

 しかし、徐々に出場機会を得ると、コンディションが良化していく。味方に自らの良さを理解してもらい、自身も味方の特徴を把握したことで連係面も向上。仲間からの信頼を掴み、ボールが出てくるようになった。

「正直、遅いですけど」と前置きしたうえで、斉藤は「勝ち得た感覚はある」と手応えを話す。「好調の要因は、出ていない時も、上手く行っていない時も、やり続けたこと」と言うように、地道に取り組んできた形が、前節までの3試合連続ゴールという形で成果が現われる。

 オフ・ザ・ボールの質も上がっており、フェイエノールト戦でも何度も動き直して相手DFと駆け引きし、パスを呼び込むシーンが目立った。時間はかかったものの、確実にレベルアップを果たしており、手応えは得ている。

 ただ、斉藤にとっては成長の過程に過ぎず、自身のプレーを追求し続けている段階だ。ここからどのような進化を遂げていくのか。3戦連続ゴールを記録するなど、相手からの警戒も強まってきた。そのなかで結果に結びつけられれば、来季のさらなるステップアップも見えてくる。

 ようやく掴んだ飛躍の兆しを無駄にせず、上だけを見て異国の地で貪欲に挑戦を続けていく。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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